農業におけるAI活用の取り組みの海外最新事例

AI活用の取り組み模索が広がる海外の農業

 

 国内でも農業にAIを活用する取り組みが徐々に生まれ始めているが、海外では積極的にAIを活用した最新技術を農業に活用する取り組みが大きく進み始めている。

今回はAIを農業に活用している先進的な海外企業の事例を紹介していきたい。

 

 

1.AI活用による的確な雑草検知で除草剤散布を最適化

 

米国のBlue River Technology Incは2011年に創業され、コンピュータービジョンとロボティックスに特化した農業向けのソリューション開発に取り組んでおり、正確に雑草の種類を見極めて除草剤を散布するAI搭載マシーンを提供している。

 

 Blue Riverはカリフォルニア州に本部を置き、アリゾナ州にもオフィスを設けている。チームはスタンフォード大学卒業生やハーバード大学の卒業生、Googleでの勤務経験者等の多種多様なバックグラウンドを持つ人物で構成されおり、コースラ・ベンチャーズやData Collective Venture Capital等の投資も受けている。

 

 多くの農家が除草剤抵抗性雑草の防除対策に頭を抱えており、約250種類もの除草剤抵抗性雑草があると言われる、それぞれの特性に合わせた適切な除草剤散布を行うかが大きな課題となっている。

 

 しかし、1つの農場でも多くの種類の除草剤抵抗性雑草があるため、1種類の除草剤では防除対応ができずに、多くの種類の除草剤散布で多額の資金投入が必要になる上、除草剤の散布量が増大するため、収穫物まで傷つてしまっている。

 

 多くの種類が存在する除草剤抵抗性雑草の防除を効率的な除草剤散布で実現するべくBlue RiverはAI搭載のSee&Sprayというトラクター等に取り付ける除草剤散布をコントロールするソリューションを開発している。

 

 See&Sprayはディープラーニングで除草剤抵抗性雑草を含む雑草に関する数万種類の膨大な画像データを学習させている。See&Sprayにはカメラと赤外線センサーが搭載されており、雑草の色、形状などの特徴を認識して、ディープラーニングで学習した雑草のデータとを照合し、雑草の種類を特定して、その雑草に効果的な除草剤を散布する。

 

 

 

 Blue Riverによると、See&Sprayを導入した農家は、一律に複数の種類の除草剤を散布していた従来の作業と比較して、平均で除草剤のコストを90%も削減を実現している。

 

 また収穫物に過剰に除草剤が散布されることがなくなったため、収穫量の増加といった副次的な効果も得られている。

 

 

2.植物の健康状態をチェックするPEATのAI

 

 PEAT GmbHはドイツに本部を置くソフトウェア開発企業で、農家や植物園向け、もしくは趣味でガーデニングを楽しむ人々をターゲットに、スマートフォンやタブレットで植物の写真を撮影すると病気の有無や栄養不足が起きていないか等の診断を行うことができる植物生育アシスタントアプリPlantixを開発している。

 

 CEOのSimone Streyは植物地理学と土壌科学を専門とする地質学者であり、その他のチームメンバーには植物病理学の専門家などが在籍しており、植物に関する知見を豊富に持ったメンバーで構成されている。

 

 Plantixは開発段階で大量の植物の健康な状態、病害虫にかかっている状態など、様々な状態の植物の画像を学習させている。 ユーザーが植物の画像をアップロードするとAIの学習済みモデルから、該当する植物とその状態を解析して、即座に使用端末の画面に植物報、病名、病気に効果的な治療方法や薬剤を表示する。

 

 ユーザーが植物の写真をアップロードするたびに、AIの学習モデルをブラッシュして診断精度を高めており、毎月5,000種類もの植物の写真がアプリからアップロードされ、AIにより400種類以上の植物の診断ができるそうだ。

 

 アプリは月に100万回以上使用され、特にインドやブラジル、北部アフリカで使用されている。

 

 Plantixは無料でダウンロードできるので、大きな農家はもちろんだが、農業コンサルタントを雇えない小規模農家に愛用されているようだ。

 

 

3.土壌分析でのAI活用進めるTrace Genomics

 

 2015年に創業され、米国サンフランシスコに本部を置くTrace Genomics, Incは土壌診断ソリューションを提供している。

 

 経験ある農家でも、植物/農作物の生育に大きな影響を及ぼす土壌の状態を見極めるのは難しく、農家の土壌の状態把握を支援するソリューションとしてAIを活用した土壌診断サービスを開始している。

 

 Trace Genomicsは機械学習のエンジニア且つデータサイエンティストのDiane Wu と13年のゲノムと遺伝子研究経験があるPoornima Parameswaranによって創立された。400万ドル以上の出資を集める等、大きな話題を呼んでいるスタートアップ企業である。

 

 Trace Genomicsの土壌診断ソリューションでは、AIを活用した土壌の遺伝子検査を行っており、利用者はTrace Genomicsに少量の土を送り、送られた土から核酸を抽出して、Trace Genomicsが保有する専用のデータベースにアップロードされ、プラットフォームに搭載されたAIが機械学習を行い土壌の状態を解析する。

 

 Trace Genomicsの土壌診断AIソリューションでは、土壌に含まれる細菌などのデータ化したDNA配列等をあらかじめ学習させたモデルを構築しており、送られてきた土の解析データを学習済みモデルで解析し、土壌の状態の診断を行う。結果はオンライン上のダッシュボードに数値や表としてアップロードされ、ユーザーは農地などの病原菌の発生状況や土壌の健康状態が分かる。

 

 また、土壌を改善するためのガイドラインも提示されるので、それに従えば植物/農作物にとって最適な土壌を作れるのだ。

 

 

4.AI活用により効率化が期待される農業 

 

 農作業において、農業従事者の経験と勘に頼る部分が多く存在しているが、ヒトの目で判断を行っていた雑草の見極めと除草剤散布や商物の生育状況/健康状態の診断だけではなく、ヒトの目だけでは十分に対応できない土壌診断など様々な領域でのAI活用の試みが海外では積極的に進められている。

 

 高齢化の進展に伴う農業従事者の減少や、TPP発行に伴う、海外農作物との競争などに対応していくためには農業の効率化も待ったなしの状態であり、海外のような大規模農場での取り組みをそのまま取り入れることはできないが、国内の農業においてもAI活用などによる効率化の模索は今後、進展が見込める分野と言えるだろう。 

 

 

 

 

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

AI/INNOVATION SOLUTIONチーム

 

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種でのAIプロジェクトの推進支援や新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業におけるAIプロジェクトを推進や、新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

 

監修者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

執行役員パートナー 東條 貴志

 

スタートアップでの新規事業立ち上げや事業責任者などの経験と、アーサーアンダーセン、ローランド・ベルガーなど複数ファームでの10数年のキャリアに基づく先端領域における大手企業の新規事業・イノベーション創出支援やAI/機械学習を活用した事業創出/業務改革に多数の経験を有す。

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