海外スポーツ業界における顧客サービスとしてのAI活用事例

AI活用によるマーケティングが進む海外スポーツ業界の事例

 

 スポーツ業界では、選手のパフォーマンス向上のためのAI活用が競技に合わせて様々な形で実用化され始めている。競技に関するAI活用に加えて、プロモーションやスタジアムに訪れた顧客に向けた顧客サービスとしての活用事例も広がりを見せ始めている。

 

今回は、こうしたスポーツ業界での顧客サービスの進化の可能性を感じさせる2つのAIテクノロジーと活用事例を2回の記事に分けて紹介したい。

 

 

1.GrabyoのAI技術とスポーツ中継配信サイトの事例

 

 Tennis TVは、世界各地で行われる男子プロテニスの試合をライブ配信する男子プロテニス協会(ATP)公式のサービスである。年間2,000試合以上のライブ配信を行っており、ネット接続環境さえあればPCやタブレット、スマートフォンなどデバイスを選ばず視聴可能だ。

 

Tennis TVは契約ユーザー数の増加を目標としてSNSを活用したマーケティングに力を入れることにした。Tennis TVには数多くのフォロワーがいたからだ(Twitter:約20人万人、Instagram:約40万人)。

 

 通常の広告出稿による膨大なマーケティングコストをかけたプロモーションをを行うよりも、SNS上でのファンを増やして有料会員化を進めることが効率的だと判断したのである。

 

 しかし、単にFacebook、Instagram、twitterに投稿を行うだけでは有料会員の増加にはつながらないが、ハイライトだけを見たいユーザーのニーズが多いことを発見し、効率的なハイライト配信を行うことができるソリューション探索を行い、GrabyoのAIソリューションを導入することにした。

 

 2013年にロンドンで設立されたGrabyoは、「Financial Times' FT 1000 Europe」でヨーロッパで77番目に早いスピードで成長しているテクノロジー企業に選ばれた。現在はロンドンのほかに、ニューヨークにも拠点を置いている。

 

 Grabyoが開発するのは、ビデオ制作から編集、配信まで行うことができるAIクラウドソリューションで、編集を行った動画を即座にFacebookやTwiiterなどのSNSに配信することができる。

Tennis TVがとくに注目したのはAIによるハイライト動画の自動制作である。

 

Grabyoでは、長ければ2時間を超える試合の中で、的確にハイライトシーンを抽出できるように、あらかじめ膨大なテニスの試合動画を学習させている。

 

試合動画の観客の反応(完成やブーイング、沈黙など)、スコア、解説者のコメントなどを識別/解析して、試合の盛り上がりの度合いをスコアリングできるようにしている。

 

 GrabyoのAIで事前に学習させた試合内容と盛り上がりのスコアと実際の試合の状況を照合し、盛り上がりの度合いをスコアリングし、試合中の盛り上がった場面を特定している。

 

 例えば、サービスエースが決まるなどの劇的な場面で、観客が一斉に立ち上がり、大きな歓声が上がるなどすれば、盛り上がり度は高く、地味なラリーが続いて観客の反応が薄ければ盛り上がり度は低いと判定できるようになっている。

 

AIによる盛り上がり度のスコアリングはリアルタイムで行われ、盛り上がり度が高いシーン、つまり、試合を生中継で観ていないユーザーもハイライトで観たいと感じるような場面は、配信用に即座にハイライト動画が自動生成されるのだ。

 

試合が行われている間、Tennis TVの編集チームはAIが生成したハイライト動画をリアルタイムでTwitterやInstagramなどのSNSに配信できるようになった。

 

GrabyoのAIは高い精度でハイライトシーンの抽出を行うが、足りない部分は編集チームがクラウド上で即座に編集・制作することもでき、AIが生成したハイライト動画も編集することが可能だ。

 

こうした観るユーザーの興味を引きつけるハイライト動画の自動生成機能により、Tennis TVは毎年2,000試合以上行われる試合でハイライトをリアルタイムでSNS配信できるようになり、アプリの利用者と契約者の数が劇的に増加させることに成功している。

 

 

2.スポーツの場面理解へのAI活用の可能性

 

 Grabyoのハイライトの自動生成は動画の各シーンの特徴を抽出し、ユーザーが観たいと考える盛り上がる場面を歓声や解説内容などを手がかりにして、生成する場面を特定している。

 

とくにスポーツにおいては盛り上がる場面は競技ごとにある程度類型化することが可能であり、場面特定と切り取るべき前後の時間などをパターン化することで観たユーザーが違和感を感じないレベルで自動制することが可能なのだろう。

 

こうしたハイライト自動生成とSNSでの拡散は多くのスポーツにおいて、ユーザーを引きつける効果的なマーケティングツールとして活用することができる。

国内でもこうした取り組みによる、ファン獲得や配信サービスへの誘導が施策として広がっていくのではないだろうか。

 

 

 

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

AI/INNOVATION SOLUTIONチーム

 

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種でのAIプロジェクトの推進支援や新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業におけるAIプロジェクトを推進や、新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

 

監修者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

執行役員パートナー 東條 貴志

 

スタートアップでの新規事業立ち上げや事業責任者などの経験と、アーサーアンダーセン、ローランド・ベルガーなど複数ファームでの10数年のキャリアに基づく先端領域における大手企業の新規事業・イノベーション創出支援やAI/機械学習を活用した事業創出/業務改革に多数の経験を有す。

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