従業員エンゲージメントのリアルタイム把握で組織変革を目指す海外AIソリューション

AI活用でリアルタイム従業員エンゲージメント把握を目指す

 

 グローバルでの急速な環境変化に伴い、人材の効果的な活用を進めるべく人事において従業員エンゲージメント(Employee Engagement)の考え方に対して、これまで以上に注目が高まっている。

 

 従業員エンゲージメントとは、従業員が企業のビジョンに共感し、目標を理解し、自発的に貢献しようとする意欲を指し、従業員エンゲージメントが高い状態を維持できれば、企業と従業員の目指す目標に対してベクトルが合っている状態で、企業は優秀な人材を集め、離職率を低下させることにもつなげていくことができる。

 

 従業員満足度(Employee Satisfaction)と従業員エンゲージメントとは異なる概念であり、従業員エンゲージメントの向上は、従業員に高いパフォーマンスを発揮してもらい、業績を向上させることにつなげていくことを目指して実施される。一方、従業員満足度の向上は、従業員を十分に処遇したり、福利厚生など従業員にとって良い環境を整えたりすることで実現されるものであり、環境への満足と定着が主なゴールとなり、必ずしも従業員のパフォーマンスを高めることにはつながらない。

 

 従業員エンゲージメントを把握するには、定期的にエンゲージメント調査を行うことが必要であり、これまでも多くの企業の人事部門では、年に一度といった頻度などで定期的に全従業員を対象とした調査を行ってきた。

 

 しかし、ビジネス環境の変化や、人材流動性が高まってきている中、この頻度では、全社の従業員エンゲージメントの状況や変化の実態をつかむことは難しい。

 

 従業員エンゲージメント調査を、より高頻度/短時間で実施・分析し、迅速に適切なアクションへとつなげるために、AIを活用する事例が見られるようになってきた。

 

 

1.英メディアSkyにおける従業員エンゲージメントとAIの活用

 

 イギリス、ロンドンの郊外に本社を置くメディア大手Skyは、25,000人強の従業員が働くグローバル企業である。

 

 Skyは、クリエイティブなメディアの世界においてイノベーションを起こしていくためには、従業員の幸福の実現と成功にフォーカスすることが重要と考え、必要な職場環境や働き方の改善に積極的に取り組んでいる。そのため、Skyは従来の従業員エンゲージメント調査では実現できなかった限りなくリアルタイムに近い形での調査・分析とそれらを基にした施策実施ができるように、AIで強化された従業員エンゲージメント調査を、毎週あるいは毎日といった高頻度で行っている。

 

 AIを活用した従業員エンゲージメント調査でほぼリアルタイムに「組織の健康状態とその変化」を把握し、適切なアクションを即時に行うことで、従業員パフォーマンス向上に取り組んでいる。

 

 また、Skyは戦略の中核に、組織のダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(受容)の実現を組み込んでおり、女性のリーダーシッププログラムや、LGBT+@Skyネットワークなど、様々な施策も実施している。

 

 この領域でも、AIで強化された従業員エンゲージメント調査が行われ、従業員は、20ほどの短い質問に回答すると、24時間以内にフィードバックを受けることができる。調査への参加率は平均82%と高い水準となっており、こうしたAI活用による従業員エンゲージメント調査で人材活用における重要施策の従業員への展開と時の反応の追跡を行っている。

 

 

2.Glintの従業員エンゲージメント分析AIソリューション

 

 前述のSkyの従業員エンゲージメント調査で使われているのは、従業員エンゲージメント調査のためのソリューションを提供する米カリフォルニアのGlintのPeople Successプラットフォームである。People Successプラットフォームは、Skyの他にも、ユナイテッド航空、LinkedIn、Nvidia、AoL、IKEAなど、グローバルで事業展開する多くの企業で採用されている。

 

 GlintのPeople Successプラットフォームでは、従業員はPC、モバイルフォン、タブレットなど好みのデバイスで短い設問に回答してもらうことで、リアルタイムに回答内容が解析され、従業員エンゲージメントという観点での組織の強み、弱みの分析/評価結果が確認でき、それらを踏まえた推奨のアクションプランも提示される。

 

 アクションの実行と進捗、影響度もトラッキングすることができるので、調査だけで終わることなく、確実にアクションにつなげていくことができる。回答結果は、予め権限が与えられたユーザーのみがダッシュボードから一元的に確認することができ、詳細を確認したい部分については、ダッシュボードからドリルダウンで個々の回答まで確認することができる。

 

 その際の従業員からの回答は、匿名化されており、個々人の回答をダッシュボードを閲覧するユーザーに見られるということがないように配慮がされている。

 

 調査のフリーコメントは自然言語処理により、分析しやすいようにタグ付けや分類がなされ、従業員エンゲージメントについてキーワードの分布などで状況を把握でき、より深く現状理解できるように処理される。

 

 People Successプラットフォームでは、機械学習によるパターン認識と自然言語処理が組み込まれたGlintのAI-for-HRテクノロジーが採用されている。 AI-for-HRの大きな特徴は 機械学習によるリアルタイム・アラート離職やパフォーマンス低下のリスクがある従業員が見つかったときや、その他のキーとなるパフォーマンス指標に大きな変化があったときに、自動的にアラートを行う。従業員や組織のデータと調査回答結果とアラートの内容に対してAI-for-HRへのフィードバックを行うことで、学習し、パターン認識/アラート実施の精度を高めている。

 

 Glintの自然言語処理エンジンNarrative Ingelligenceによるコメント解析とアクションプラン生成従業員エンゲージメント調査で収集した、大量のフリーフォーマットのコメントについて自然言語処理を行い、即時に従業員の感情の傾向を把握する。

 

 同時に、その分析結果から推奨するアクションプランを提示することで、重大な問題が発生する前に、対応を行うサポートができるようになっている。

 

 GlintのAI-for-HRによって強化されたPeople Successプラットフォームを活用することで、従業員エンゲージメント調査とその後の分析からアクションプラン策定/実施までを高頻度/短期間で実施できるようになる。これによって、何か問題が発生してから対処する受け身の人事部門ではなく、問題の兆候をリアルタイムに把握し、問題発生前に打ち手が実行できるプロアクティブなアクションを実行する人事部門に変革することができる。

 

 加えて、人による分析では発生しがちなバイアスを、AIによる分析で排除し、公平/効率的に施策を実施していくことができる。

 

 さらに人事部門の業務効率化という観点でも、従業員エンゲージメント調査やそれを把握する取り組みで発生する大量の事務作業を減らし、従来時間を取ることができなかった人材開発のクリエイティブな取り組みに注力することができるようになる。

 

 

3.人事部門をクリエイティブに進化させるAI従業員エンゲージメント分析

 

 人材流動性が高まる中、組織として従業員のパフォーマンスを高めて、離職を抑えるという従業員エンゲージメントの把握とそれに基づく人材活用の取り組みは今後、国内においてもその重要性が高まっていくことは間違いないだろう。

 

 従業員エンゲージメントの状況の把握や、必要なアクションプランの計画と実施について、人事担当者のスキルに加えて、より広範囲/高頻度/短期間での調査/施策実行のサイクルを回していくことを実現するために、今回紹介した事例のように、AI活用による従業員エンゲージメント調査のソリューションは有効な手段の一つとなり得るだろう。

 

 従業員エンゲージメントが、より正確に、リアルタイムで把握できるようになるならば、人事部門は、これまで以上に適切なタイミングで多くの施策を打つことができるようになる。

 

 こうした取り組みは、人事部門を管理主体の部門から、従業員のパフォーマンス向上に加えて組織のパフォーマンス向上に貢献することまでミッションとする人事部門へと進化をさせていく一助ともなるだろう。

 

 

 

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

AI/INNOVATION SOLUTIONチーム

 

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種でのAIプロジェクトの推進支援や新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業におけるAIプロジェクトを推進や、新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

 

監修者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

執行役員パートナー 東條 貴志

 

スタートアップでの新規事業立ち上げや事業責任者などの経験と、アーサーアンダーセン、ローランド・ベルガーなど複数ファームでの10数年のキャリアに基づく先端領域における大手企業の新規事業・イノベーション創出支援やAI/機械学習を活用した事業創出/業務改革に多数の経験を有す。

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