海外スポーツ業界における顧客サービスとしてのAI活用事例②

海外スタジアムでのAIを活用による顧客サービス向上施策の事例

 

 

 前回記事では男子プロテニス協会の試合をオンラインで配信するTennisTVの自動ダイジェスト生成について紹介したが、今回はスポーツ業界でのスタジアムにおける顧客サービスの進化をAI活用で実現した事例の紹介をしていきたい。

 

 

1.Satisfi LabsのAI技術とベースボールスタジアムの事例

 

 Satisfi Labsは、ニューヨークに拠点を置くスタートアップ企業だ。主にスポーツ業界を対象としたAIソリューションを提供している。特に、様々なスポーツの試合が行われるスタジアム運営を効率化するプラットフォーム開発を行っている。

 

 Satisfi Labsの開発するAIプラットフォームとして、コンシェルジュのようにスタジアムに訪れたユーザーの質問に正確に答えるソリューションを提供している。これまでにNBAやメジャーリーグ、NFLなどに所属する計30以上のプロスポーツチームとパートナシップを結んだ実績がある。

 

 スポーツチーム/スタジアム運営事業者はSatisfi Labs のAIにスタジアムに関する様々な情報(例えば、トイレや販売店の位置、スタジアム全体のマップ、駐車場の収容可能台数、喫煙エリアの位置など)を学習させることで、ユーザーからのアプリやフェイスブックのメッセンジャーなどによるスタジアムの施設や試合についてなどの質問を行うと、ユーザーのいる場所に合わせた回答を得ることができる。

 

 これだけなら多くの事業者が提供する普通のチャットボットと変わらないように見えるがユニークな点としては、Satisfi LabsのAIはユーザーの位置情報を加味して回答する点にある。

 

 例えば、「トイレはどこ?」と尋ねたとしよう。AIはユーザーの位置情報から、最も近い位置にあるトイレの場所を教えられる。位置情報を加味した回答でなければ、遠く離れた位置にあるトイレを提示する可能性がある。

 

 さらに、監視カメラでトイレの列を確認し、定期的に待ち時間をアップデートすると、大まかなトイレの待ち時間まで伝えられるといったことまで実現可能だ。

 

 また質問内容はリアルタイムでプラットフォームに蓄積され、AIがアルゴリズムでデータ分析し、どのドリンクが売れているのかなども判別させることが可能になっている。

 

 

2.Satisfi Labsを活用したメジャーリーグ球団

 

 MLBのプロ野球チーム、アトランタ・ブレーブスは4万1千人収容できるサントラスト・パークを本拠地とする。スタジアムでは何度も来場者から同じような質問や苦情が寄せられ、スタッフの時間を取られており、ブレーブスはスタジアムのオペレーションの効率化と顧客満足度を高めるために、Satisfi LabsのAIを搭載したアプリ”Braves Bot"を独自開発した。

 

 アプリには、サントラスト・パークのマップ、フードの売店、フードメニュー(配合栄養素含む)、トイレの位置、駐車場の位置など思いつく限り全てのスタジアムに関する情報をAIに学習させてサービス提供を行った。

 

 こうした取り組みにより、アプリで来場者の疑問が解消されスタジアム運営の効率化が進み、来場者がスタッフへ質問する回数や苦情を減らすことに成功している。

 

 また、リアルタイムで集まった来場者の質問などのデータ分析から、多くの来場者がグルテンフリー食品を求めることが判明した。そこで、スタジアム内の販売店で豊富な種類のグルテンフリー食品の販売を決定した。

 

 さらに、試合開始までの待ち時間に子どもの気を紛らわせるスペースがないかとの質問も多く寄せられたため、ブレーブスは小さな子どもを連れた親のため、アプリで予約できる子供が遊べるロッククライミングスペースを作るなど、施設の改善にも反映させている。

 

 結果的に、来場者の満足度が高まっただけではなく、ユーザーファーストの視点でスタジアム運営が可能となった。

 

 

3.AIで変えるスポーツ業界/スタジアムの顧客サービス

 

 スポーツ業界、特にスタジアムの設備において、多くの来場者がひいきのチームや選手の試合を観るために訪れるが、来場者の声を聴いてサービスに生かすという個々の来場者に合わせたサービス提供を行い、それをさらに設備に反映するというところまで取り組むスタジアムはほとんどなかったのではないだろうか。

 

 スタジアムの来場者にとって試合を目の前で体験するということが最大の価値ではあるが、試合前、休憩時間などのスタジアムの施設まで含めて最高の体験できる場とすることが継続的にチームのファンとして来場してもらうために必要な施策となるだろう。

 

 数千人から数万人も来場するスタジアムで従来のスタッフや設備でだけでは個々の来場者への満足度を高めるためのサービスを行うことは難しいがこうしたAI/アプリ活用による個々の来場者に合わせたサービス提供/情報提供を実現することで、これまでにないスタジアムでの体験に対する満足度の向上により、継続的に来場してもらう施策として効果的に活用することができる可能性があるのではないだろうか。

 

 

 

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

AI/INNOVATION SOLUTIONチーム

 

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種でのAIプロジェクトの推進支援や新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業におけるAIプロジェクトを推進や、新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

 

監修者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

執行役員パートナー 東條 貴志

 

スタートアップでの新規事業立ち上げや事業責任者などの経験と、アーサーアンダーセン、ローランド・ベルガーなど複数ファームでの10数年のキャリアに基づく先端領域における大手企業の新規事業・イノベーション創出支援やAI/機械学習を活用した事業創出/業務改革に多数の経験を有す。

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