ドイツ鉄道のアクセラレータープログラムを活用した有望ベンチャー企業の探し方

ドイツ鉄道のプログラムを使い分けた有望ベンチャー企業の発掘メソッド

 

  ヨーロッパ最大の鉄道会社ドイチェバーン(ドイツ鉄道)は2017年上半期、シリコンバレー拠点のアクセラレーターPlug and Playと共同でアクセラレータープログラムを実施する。

 

 ドイチェバーンはなぜ遠く離れたシリコンバレー拠点のアクセラレーターと共同でアクセラレータープログラムを実施することにしたのか。

 

 そこには明確なドイチェバーンの有望ベンチャー企業の探し方のこだわりがあった。

 

 

1. イノベーション創出に積極的なドイツの鉄道会社ドイチェバーン

 

 1990年、西ドイツと東ドイツが再統一。その後、1994年、両国が運営していた2つの国営鉄道は「ドイチェバーン」として統合、民営化された。

 

 現在では総駅数3,500駅以上、従業員数22万人以上のヨーロッパ最大の鉄道会社となっている。

 

 また、民営化によりサービス向上に関する意識も全社的に高まり、顧客体験を向上させるためのテクノロジーの導入などイノベーション創出に積極的な鉄道会社ドイチェバーンの下地ができあがった。

 

 近年の格安航空会社の旅客数拡大や、ドイツ国内の河川/陸上輸送など輸送ネットワークが高度に発達していることにより、ドイチェバーンの旅客・輸送部門は激しい競争環境下に置かれている。

 

 そのため、ドイチェバーンは常にオペレーションの効率化や顧客体験を向上させるためのイノベーション創出の機会を求めている。

 

 ドイチェバーンは2017年から2018年まで2年の間に10億ユーロをデジタル化関連のプロジェクトに投入することを決定している。

 

 例えば、駅から自宅までの移動に対し自動運転車サービスを乗客に提供したり、列車の窓にAR技術を組み合わせた車両を開発したりなど、顧客体験向上による鉄道利用の促進を狙っている。

 

 また、ドイチェバーンは2015年、ドイツのスタートアップの拠点ともいえる首都ベルリンにDB mindboxという組織を設立し、DB Acceleratorという自社で運営するアクセラレータープログラムを開始している。

 

 このプログラムではベンチャー企業と協業して既存の鉄道事業のオペレーション業務の改善を目的としている。

 

 DB Acceleratorに加えて、2017年の上半期にはアクセラレーターと共同でアクセラレータープログラムを実施し、鉄道事業領域以外で有望ベンチャー企業を探して新規ビジネスの立ち上げを狙う。

 

 

2.自社単独で運営するアクセラレータープログラム「DB mindbox」

 

 2015年よりドイチェバーンが実施しているのは、鉄道事業に関連する領域を対象に、有望なテクノロジーを持ったベンチャー企業を探して協業するアクセラレータープログラム「DB mindbox」だ。

 

 これまでにプログラムは4期実施され、400以上のベンチャー企業からの応募を受け付け、実際に20のベンチャー企業と協業が進んでいる。

 

 プログラムは、3か月間実施され、2万5000ユーロの資金提供、ドイチェバーンの持つ多種多様な大量のデータへのアクセス、ドイチェバーン内外からベンチャー企業にメンターがつくことになる。

 

 ドイチェバーンは支援専任の担当者も設置しており、ベンチャー企業にとっては具体的に協業を進められる可能性が高い環境が用意されている。さらに、ドイチェバーンはベンチャー企業への出資を前提にせず、このような支援体制が有望なベンチャー企業を鉄道業界に惹きつけている。

 

【1期プログラムのベンチャー企業例】

  Konux

鉄道インフラストラクチャーの点検をデジタル化。鉄道インフラは経年劣化を伴うので継続的な点検・修理が必要だが、その点検をデジタル化することで迅速な修理を可能にし遅延(修理のための)を少なくする。ひいては顧客満足度の向上につながる。

 

【2期プログラムのスタートアップ例】

  Podaris

交通のネットワークの接続の設計を簡単にできるツール。交通インフラで重要なのは各路線間の接続、鉄道と電車の接続など交通ネットワークの接続だ。Podarisはそれらのネットワークをビジュアルで可視化、交通インフラの設計を容易にする。

 

【3期プログラムのスタートアップ例】

  Velo easy

駅近で自転車を駐輪できる駐輪場(コンテナ型で抜群のセキュリティ)。ユーザーはその駐輪場の予約・支払いをスマートフォンからできる。セキュリティと利便性を向上させた次世代型の駐輪場だ。

 

【4期プログラムのスタートアップ例】

  MotionTag

スマートフォンがチケットになるシステム。鉄道に乗車する際の紙のチケットをスマートフォン上で購入できるようする。また、鉄道からバスに乗り換える際も乗り換え前にバスチケットを購入でき、チケット購入の時間・手間がかからないシームレスな移動を実現。

 

 

3.アクセラレーターと新たなアクセラレータープログラムを実施する理由

 

 2017年上半期、ドイチェバーンは自社運営のアクセラレータープログラムだけでなく、アクセラレーターのPlug and Playと共同でアクセラレータープログラムを実施する。

 

 Plug and Playは世界10か国20都市に展開しており、6,000社超のベンチャー企業からなるプラットフォームを有し、100社以上の大手企業と共同でアクセラレータープログラムを実施してきた。

 

 このアクセラレータープログラムでは、ドイチェバーンのコアビジネスである鉄道事業領域以外での「交通」「移動」に関連したソリューションやプロダクトを扱うベンチャー企業を募集対象としている。

 

 鉄道事業領域以外を対象にするのが、ドイチェバーンがPlug and Playと共同でアクセラレータープログラムを実施する主な理由である。

 

 ベンチャー企業としてはドイチェバーンのメンターからのメンタリングだけでなく、Plug and Playがコネクションを持つ投資家やスタートアップからメンタリングを受けることができる。

 

 様々な領域でアドバイスを受けることができるのがアクセラレータープログラムに参加するベンチャー企業にとって大きなメリットだ。

 

 

4.イノベーション創出の領域に合わせたプログラムの使い分け

 

 ドイチェバーンは自社コアビジネスの鉄道事業領域では自社運営のアクセラレータープログラムで対応し、鉄道事業領域外ではアクセラレーターと共同でアクセラレータープログラムを実施する。

 

 オープンイノベーションプロジェクトを推進する企業はアクセラレータープログラムを運営する際には一つに絞り込んで実施することが多い。

 

 しかし、ドイチェバーンの有望ベンチャー企業の探し方は、一つの手段に留まらず、複数組み合わせることにより、最大限の有望ベンチャー企業発掘ができる様にプログラム運営を行っている。

 

 このように、対象領域が自社のコアビジネス領域がどうかによって、自社運営アクセラレータープログラムと外部アクセラレーターを活用したアクセラレータープログラムを使い分けて、効果的に有望なスタートアップとの協業を行い、コア事業とそれ以外の両方で新たな事業創出を目指す新たなベンチャー企業の探し方が取り組みとして生まれている。

 

 

 

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

INNOVATION SOLUTIONチーム

 

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種での新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業における新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

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