アジャイル型エレベーターピッチで新しいサービス・プロダクトの方向性を定義する方法

こんにちは。イノベーションソリューション事業部の袖山です。
今回は、ブレない新規事業を開発する際に重要なエレベーターピッチの書き方について書いていきます。
前回の「【MIT式 デザインシンキング】新規事業開発の成否を分ける“初めの問い”を設定するポイント」の記事でも書きましたが、新規事業のスタートにおいてはユーザーの課題解決に根ざした“最初の問い”を設定することが大切です。
アジャイル開発でも使われるエレベーターピッチを用いて “最初の問い”をさらに具体化することで、サービス・プロダクトの方向性が明らかになり、チームメンバーの目線を合わせることもできるようになります。
エレベーターピッチとは
エレベーターピッチとは、エレベーターに乗るくらいの短い時間にピッチ(=プレゼンして目標を達成する)を行う手法です。
もともと私が在籍していた楽天においても、三木谷社長をはじめとした重役の時間を確保するのがとても難しいので、文字通りエレベーターに乗っているくらいの短い時間の中で、提案や相談の趣旨を端的に伝えて決済を得るということをよくやっていました。
エレベーターピッチとはプレゼンや商談を成功させるための話術といった意味合いが強いのですが、実はアジャイル開発において使われる方法論の一つでもあります。
アジャイル開発ではさまざまなバックグラウンドや価値観をもったメンバーが集まり開発を進めることになるため、初めにプロジェクトの全体像を定義し、かつメンバーの目線を合わせるという作業が非常に重要になります。
プロジェクトの全体像を定義するのが10種のドキュメントから成るインセプションデッキであり、その中でサービス・プロダクトの定義を行うドキュメントがエレベーターピッチなのです。
ちなみにエレベーターピッチ以外には「なぜチームがこのプロジェクトに取り組むのか」「チームメンバーがやりたいこと、やりたいくないこと」「社内で巻き込むべきステークホルダー」などについての定義がありますが、これについては別の記事で紹介したいと思います。
エレベーターピッチが新規事業開発で有効な理由
エレベーターピッチには新規事業開発のプロセスの最初に検討が必要な要素が全て盛り込まれているのが一番の理由です。
新規事業開発ではビジネスモデルやスケール方法を考える前にまずPSF(Problem Solution Fit)を証明することが定石とされています。PSFとは新事業開発のプロセスにおける一つの関門のことで、これが証明できていれば次のフェーズに移る、できなければ再度課題の探索からやり直すという指針です。
どんなに優れたビジネスモデルを考えても、マーケットが大きそうでも、ユーザーが使ってくれないサービス・プロダクトでは意味がありません。
限られたリソースの中で成功の角度を少しでも上げるためには、「課題・ニーズが存在し、ソリューションがそれらを解決する(PSF)」をまず証明し、次に「ソリューションにお金を払うユーザーが十分に存在する(PMF)」を証明するというプロセスで進んでいく必要があります。

プロジェクト期初の定義書「Plan A」を記述する方法として、ビジネスモデルキャンバスなどいくつかのフレームワークが存在しますが、まず課題を抱えているユーザーにフォーカスするエレベーターピッチを使うことで、出だしで躓くことなくプロジェクトをスタートすることができます。
エレベーターピッチの書き方
こんな感じでエレベーターピッチを書きます。
メルカリの例を付けてみました。

エレベーターピッチを書く際のポイントについてもまとめてみました。

[参考]
どんなお客さんの、どんなお困りごとを解決するサービス・プロダクトなのか?
競合がひしめくマーケットで、どうやって勝つのか?
これらについて特に意識しながら書きます。
プロジェクトの期初なので、課題が存在するのか?ソリューションにユーザーがお金を払うのか?勝てるのか?が完璧に証明されている必要はありませんが、仮説を持っておくことが重要です。
エレベーターピッチのテンプレート
エレベータピッチのテンプレートもまとめたのでご自由にダウンロードして使ってください。

チームでプロジェクトに取り組む場合は、メンバーひとり一人が書いてきてそれを持ち寄るか、項目ごとにブレインストーミングしてアイデアを発散・収束させるといいでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
プロダクトの価値を見定め言語化することで初めて、ユーザーに使ってもらえるアイデアになります。
時間も人も金も資源も限られる新規事業開発では、無駄な動きをしている余裕は一切ありません。スタートでコケないようにするためにも、エレベーターピッチを活用してプロジェクトの方向性を定義し、メンバーの目線を合わせておくことが重要です。
今回はサービス・プロダクトを定義するエレベーターピッチだけを紹介しましたが、新規事業を成功させるためには他にも大切な要素がたくさんあります。
次回の記事ではインセプションデッキについて紹介したいと思います。
イノベーションソリューション事業部では、社内イノベーターを育てるための企業向けのトレーニングプログラムを提供しています。MIT式の新規事業創出手法を取り入れたプログラムの詳細はこちら。

袖山晋(Shin Sodeyama)
株式会社ベルテクス・パートナーズ
イノベーションソリューション事業部
デザインシンキング歴15年以上。クリエイティブファームにてブランディングや新事業開発支援の経験を経のち、ものづくりベンチャーを起業し、プロダクトの大英博物館永久収蔵を実現。その後、楽天ヘッドクオーターにて佐藤可士和氏の下、グループ全体のサービス開発支援、UX・ブランド統一プロジェクト推進。ベルテクスパートナーズでは、デザインシンキングを中核にビジネス、テック、クリエイティブの多角的なアプローチでイノベーション創出支援を推進。
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