社会的意義とイノベーションを両立させるSephoraのアクセラレータープログラム

CSR(社会的責任)としてイノベーションを目指すSephoraの取り組み事例

 

 アクセラレータプログラムの多くがオープンイノベーションでの事業創出を目指す中、アクセラレータープログラムをCSR(企業の社会的責任)に活かす取り組みが生まれている。

 

 化粧品専門小売大手のSephoraはCSR活動の「Sephora Stands」の取り組みの一環としてアクセラレータープログラム「Sephora Accelerate」を始動。2020年までに女性経営者のスタートアップ企業50社を支援することを目指す。

 

 SephoraはLVMH(ルイヴィトンなどの有名ブランドを有するフランス本拠地のコングロマリット)傘下にあり、世界33ヵ国に約2,300店舗を有し、海外で非常に知名度が高い化粧品専門小売事業を展開している。

 

 なぜSephoraは女性支援に特化したCSR活動の一環としてでアクセラレータープログラムをすすめることにしていったのかを見ていきたい。

 

 

1.女性の起業支援を社会的意義を果たしつつ競争力を強化するカギと認識

 

 近年、スタートアップ業界での女性の活躍は一見、目覚ましいように思える。しかし、そのような印象とは裏腹に現状は少し異なるようだ。

 

 米国バブソン大学の調査(2011~2013年実施)によると、2011~2013年の米国におけるベンチャーキャピタルによる投資総額508億ドルのうち、女性がCEOを務めるスタートアップが投資を受けた額は約3%の15億ドルだけとなっており、VCからの女性CEOの経営する企業への投資はほとんど進んでいない。

 

 女性をターゲットにした事業を展開するSephoraにとって、女性目線をフルに反映した商品・サービスを扱う企業が少ないということは、市場全体の活性化を図る上で大きな課題と認識していた。

 

 その点に強い問題意識を持ったSephoraはアクセラレータープログラム「Sephora Accelerate」を通じてスタートアップシーンへの女性起業家の進出を促すべく、2020年までに女性経営者のスタートアップ企業50社を支援することを目指す。

 

 顧客層の中心が女性である化粧品、美容業界において女性がCEOとなるスタートアップ(それも自社の味方になる可能性が高い)を育成、増大させていくことはSephoranoのビジネスとしても大きなプラスに働くことが見込めると考えられる。

 

 

2.新たなエコシステムを構築する「Sephora Accelerate」

 

 2016年の「Sephora Accelerate」の支援対象は化粧品・美容業界で既に製品・サービスはあるものの利益がまだ大きく出ていない、アーリーステージの段階にある女性CEOが経営するスタートアップを対象としている。

 

 プログラムの支援として1週間の教育プログラム(サンフランシスコ)とその旅費、2,500ドルの資金提供、スタートアップの希望に応じては低金利でのローンも設定される。さらに、化粧品・美容業界に精通したSephora社員をメンターとするオンラインでの定期メンタリングも実施される。

 

 ポテンシャルあるものの、事業経験が浅いスタートアップが化粧品・美容業界においてビジネスを展開する際につまづきがちな失敗を回避し、順調に成長するための水先案内人のような役割をSephoraのメンターが果たしていく。

 

 スタートアップにとっては上記のような資金調達、業界理解のためにもSephoraのサポートを活用することができるのは美容・化粧品業界でビジネスを行う上で大いに役に立つ支援となるだろう。

 

 また、その他に特筆すべき点として、従来の企業アクセラレータープログラムではスタートアップとの協業や、スタートアップへの出資による投資収益獲得を期待するプログラムが多いが、Sephoraのプログラムは協業の義務付けもなく、出資による投資収益獲得を期待した出資も求めない。

 

 代わりに女性起業家を多数輩出して、化粧品・美容業界において女性主導のイノベーションが生まれ続けるエコシステムを構築するということを目標に掲げている。

 

 エコシステムの成長/拡大によりSephoraは中長期で有望なスタートアップの囲い込みを実現し、様々な事業創出機会を得ることができるだろう。

 

 

3.2016年のSephora Accelerateの選出企業8社

 

 2016年のSephora Accelerateはスタートアップ8社を選出した。顔ぶれを見てみると選抜基準にしっかり則っていることがわかる。

 

  One Love Organics

オーガニック認定を受けた環境にやさしい自然素材のスキンケア商品を生産・販売。

 

  GlossGenius

個人事業主のビューティシャン向けの顧客の予約管理、通知送信など顧客対応を簡単にするオンラインプラットフォーム。

 

  Myavana

ユーザーの 髪の毛の状態を診断し、最適な製品を提案するツール。

 

  Thrive Causemetics

野菜を原料とする化粧品。化粧品が購入されるごとにガン患者に化粧品を1つプレゼントする。

 

  Eu'Genia Shea

シアの木(西アフリカに生育する木)からとれる脂で作ったスキンクリーム。シアの脂はガーナから調達し、現地の雇用を創出する。

 

  Laxmi

ナイル川流域でとれる植物を原料とした保湿クリーム。ナイル川流域の生産者には、正当な賃金で働けるよう搾取することなく正当な賃金を払っている。

 

  Stylerz

メキシコのビューティサロン、スパを簡単に検索・予約できるアプリ。

 

  Sahajan

インドの伝統医学アユルベーダの製法で作った化粧品。

 

 選ばれたスタートアップは女性CEOが経営する企業であるとともに、「Sephora Stand」の基本コンセプトに則った環境配慮、自然原料由来、チャリティといった社会的によい影響を与えられるサービス/商品で美容・化粧品関連領域でのイノベーション創出を目指す企業が中心となっている。

 

 

4.社会的意義とイノベーションを両立させるアクセラレータープログラム

 

 従来の企業アクセラレータープログラムはスタートアップとの協業でビジネス開発をしたり、スタートアップへの投資による収益獲得を志向したものが多かった。

 

 しかし、Sephora Accelerateは収益獲得よりも女性の起業支援社会的意義のある商品・サービスを展開をしている企業の支援という位置付けが前面に打ち出されている。

 

 これは中長期的に長い目で見た場合、Sephora のビジネスにも有益な成果が見込まエル取り組みでもある。

 

 Sephoraはプログラムを通して、社会的に意義のある事業をしている女性起業家を支援・輩出し、Sephoraとの将来的に連携が生まれる可能性がある企業を多く抱えるエコシステムを自社の周辺に築いていくことができる。

 

 それはSephoraのブランドイメージを高めることに貢献するとともに、そのエコシステムから生まれる協業を通じた事業は、競合との差別化を生み出すものとして機能していくことが期待できる。

 

 このようなCSR活動という位置付けが前面に出たアクセラレータープログラムはイノベーション創出を急ぐ企業にとって非常に遠回りな取り組みに見えるが、自社の事業強化/差別性創出につながる協業先候補を育成する取り組みは中長期的には合理的な大きな成果を生み得る施策になると言える。

 

 短期的な成果に捉われず、中長期の取り組みとして自社が中心となってスタートアップのエコシステム構築と育成を行い、社会的な意義とともにイノベーション創出を目指すことが可能な企業にとっては、こういった長期視点でのテーマ設定による将来的な競争力強化につなげるアクセラレータープログラムのあり方も選択肢の一つとなり得るだろう。

 

 

 

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

INNOVATION SOLUTIONチーム

 

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種での新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業における新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

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