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建設業界の現場管理における海外AI活用事例


建設業界で進む現場管理でのAIを活用による業務効率化

 建設業界では、旧知のように建設現場を中心に厳しい就労環境などが敬遠され、恒常的な採用難となっており人材不足が深刻化しつつある。建設現場においては、外国人労働者の活用などで人材を補う取り組みも進んでいるが、限界があり、BIMなど様々なテクノロジーを活用した現場の生産性向上の取り組みが進んでいる。

 既に様々なAI/IoTやロボ活用の試みが国内でも進み始めているが海外における現場管理でのAI活用事例について今回は見て行きたい。

1.建設現場で活用が進む進捗管理や現場状況把握でのAI活用

 今回事例として紹介するのは、2015年にJosh Kannerによって設立された米国マサチューセッツ州に本部を置くSmartvid.ioだ。創立者のJosh Kannerは建設現場での作業に、ウェブとタブレットを一足早く取り入れたパイオニア的存在のVela Systemsの創業者でもあった。

 建設現場では工事進捗の把握や工事品質管理などために、毎日膨大な量の現場の写真や動画が撮影されるため、現場監督やチームリーダーは後でそれらの画像や動画を確認する際に検索しやすいように、フォルダ管理やファイル名の設定等を行う必要がある。その写真/動画管理を手助けするAIをSmartvidが開発している。

 SmartvidのAIプラットフォームができる機能として主に以下の3つが特色として挙げられる

写真/動画管理

 現場で使用されるあらゆるデバイスから写真やビデオのアップロードが可能になっており、効率的に撮影/アップロードができるように専用のiPhoneアプリも提供している。

建設現場の学習済みデータに基づくオブジェクト認識

 SmartvidのAIプラットフォームには建設現場で使用される建設資材の名称、材質などのデータや現場作業員の画像、音声などが事前に学習されたモデルが構築されており、建設現場の写真や動画から、その中に存在している建設資材とその詳細情報や現場作業員の識別が可能になっている。

 SmartvidのAIプラットフォームではアップロードされた写真や動画の解析を行い、事前学習されたモデルに基づき、写真/動画に写っているモノに関する情報を自動的にタグ付けし、後で管理者が現場の情報検索を行うことを容易にしている。

 また事前学習の段階で、建設資材の名称なども音声で学習させているため、動画内の会話からタグ付けも可能になっている。こうした写真や動画への自動タグ付けにより、管理者はファイル整理するために、ファイル名を変更する必要がなく、大きな負担軽減を実現できる機能が提供されている。

チームコラボレーション

 建設現場チーム内で写真/動画を使った共同作業が可能で、動画や写真にコメント・注釈を入れてチーム内でリアルタイムに共有することが可能になっている。

 コメントなどはリアルタイムで反映されるため、建設現場のチーム内での情報共有が効率的に行うことが可能になっている。

 SmartvidのAIの最も特徴的な機能は、上記の中でも機械学習を用いた写真/動画の自動タグ付けとカテゴリー分けである。この自動タグ付け機能により、建設現場はもちろん、現場から離れた本社側の管理者にとっても現場進捗や状況把握の生産性を大幅に高めることができるようになっている点が特色と言えるだろう。

2.Smartvidの建設業界におけるAI活用事例

 Smartvid.のAIを活用して、課題を解決した海外事例2つを紹介しよう。1つ目は、マサチューセッツ州に本部を置くSuffolk Construction Company。Suffolkは1982年創業で従業員約1,200名を抱える中堅建設会社である。

 Suffolkは「建設をスマートにする」という目標を掲げており、もともとテクノロジー活用に強い関心を持っていたがSmartvidのAIを導入した理由として、写真と動画管理に膨大な時間がかかっており、その負担軽減を図りたいと考えていたからだ。

 建設現場での工事進捗把握と、安全管理のために現場の写真/動画の確認/管理を本部で行っていたがその負担が従来は非常に大きかった。

 いくつもの建設プロジェクトが同時進行しており、本部のマネージャーたちは現場作業員から送られてくる膨大な写真や動画のファイルを管理/検索をしやすくするためにファイル名の変更やフォルダ管理を行う必要があった。

 それらをすべて本部のマネージャーが写真/動画を確認するなどして手作業で行っていたため、毎日30~40名が動画/写真ファイルの管理作業に関わっていた。

 Suffolk でSmartvidのAIを導入した結果、現場からアップロードされてくる写真や動画を自動でタグ付け・カテゴリー分けがされるようになり、各管理者の作業時間が20時間/週も短縮され、各プロジェクト進行状況の把握に要する時間も60%短縮されるという効果を得られたという。

 さらに、簡単に現場写真と動画のシェアとコメントを行うことが可能になり、本部と建設現場のチーム間のコミュニケーションが円滑にできるように、建設現場の進捗に関わる問題発見の早期化も可能になるといった効果が挙げられている。

 もう一つの事例として、米国で最も大きな建築企業の1つで本部はスウェーデンにあるSkanskaの事例も見て行きたい。

 Skanskaは常に各建設工程での事故/トラブルのリスク発見/防止を早期に行う方法を模索してきた。24時間、建設現場の写真や動画を管理/確認しつつ、安全性向上にも期待できるSmartvid.ioのAIに興味を持った。

 SmartvidのAIをSkanskaで導入した結果、画像・音声認識機能を活用し、建設現場の写真/動画内に映っている建設資材の情報に基づいて自動タグ付けを実施している。

 現場の作業員たちは、建設現場で建設資材が適切な場所に配置されているかどうか、工事進捗/作業内容に見落としがないかどうか等の安全性と品質管理に影響を与える確認事項が効率的に実施できるようになっている。

 従来は経験豊富なマネージャーしか発見できなかった問題点も、建設工程に必要な内容とタグ付けされた情報などを確認することで経験に関わらず発見できるようになったのだ。

 また、SkanskaはSmartvidのAIを新人研修にも活用している。AIによってタグ付けされた建設現場の動画を、施工実施状況に問題があるもの(不適切な建設資材が使用されている、建設資材の工事による設置状況が不適切など)と、適切に施工が進んでいるもの(設計図面通りの施工ができているもの)に分けて、新人たちに見せて学習させるといった取り組みも行ない、新人教育の効率化にも活用されている。

 従来はマニュアルなどの文書や口頭説明による研修を行っていたが、実際の建設現場の動画を活用することで、新人のスキルアップと安全性向上にもつながったそうだ。

3.現場と本部の情報共有を効率化するAI活用

 従来は建設現場と本部の情報共有は単純に現場の写真/動画を共有するのみで、その確認/管理はヒトが実際に内容を確認する必要があり、精緻に行おうとすると大きな負担となっていた。

 しかし、こうしたAIを活用した確認/管理作業の効率化は文書だけではなく、画像/動画でも実用化進み始めており、建設業界に限らず様々な業界においても応用可能なモノだろう。 画像や動画の確認作業を繰り返し人手で行っている業務がある業界においては建設業界でのこうした事例に倣い、AI活用による効率化を検討できるのではないだろうか。

 

執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

AI/INNOVATION SOLUTIONチーム

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種でのAIプロジェクトの推進支援や新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業におけるAIプロジェクトを推進や、新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

 

監修者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

執行役員パートナー 東條 貴志

スタートアップでの新規事業立ち上げや事業責任者などの経験と、アーサーアンダーセン、ローランド・ベルガーなど複数ファームでの10数年のキャリアに基づく先端領域における大手企業の新規事業・イノベーション創出支援やAI/機械学習を活用した事業創出/業務改革に多数の経験を有す。

 
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