イノベーションの使い方を地域で変えるダイムラーのアクセラレータープログラム

地域でテーマの使い方を変えるダイムラーのアクセラレータープログラム事例

 

 独ダイムラーではアクセラレータープログラムの取り組みをドイツとシンガポールで行っているが、実施する両地域の戦略上の位置付けによって、プログラムのテーマを変えてそれぞれの地域の取り組みに合わせたスタートアップとの協業を模索している。

 

 ダイムラーがどのようにアクセラレータープログラムのテーマを使い分けているのか、その背景も併せて詳しく見ていこう。

 

 

1.商用車販売・サービス活動の管理をシンガポールへ移管して事業強化

 

 ダイムラーはメルセデスベンツなどを製造する、言わずと知れたドイツの自動車メーカーだ。日本の三菱ふそうトラック・バス株式会社もダイムラーの連結子会社である。

 

 ダイムラーは東南アジアの経済成長による商用車(トラック・バス・商用バンなど)の需要拡大を見込み、2016年にシンガポールに新拠点となるダイムラー・トラック・アジアを設立した。

 

 これまでドイツ(メルセデスベンツブランド)と日本(FUSOブランド)の2極体制で管理していた販売/カスタマーサービス活動をシンガポールへ移管した。

 

 シンガポールを中心に、東南アジアでの更なる事業強化を進める方針だ。

 

 

2.シンガポールとドイツで進行させる二つのアクセラレータープログラム

 

 このような事業環境の中、ダイムラーは2016年にシンガポールとドイツでそれぞれアクセラレータープログラム「Startup Autobahn」を開催した。

 

 両地域のプログラムは共に、シリコンバレーの大手アクセラレーターPlug&Playの運営で実施しているが、プログラムのテーマ設定は大きく異なっている。

 

 ダイムラーの本拠地であるドイツでは「モビリティ」、シンガポールでは「自動車販売・アフターセールス」というテーマで京魚可能なスタートアップを募った。

 

 それぞれのテーマについて詳しく見てみよう。

 

 

3.販売・アフターセールスの補完をテーマとするシンガポール

 

 新拠点設立で、アジア市場での販売拡大が求められるシンガポールでは、販売やアフターセールスの強化につながる技術・アイディアを持つスタートアップを募集した。

 

 シンガポール国立大学NUS とも提携し、IoT、AI、VR・AR、ゲーミフィケーション、パーソナライゼーションといった最先端テクノロジーを活用して販売促進につなげることが求められている。

 

 ダイムラーからはメンタリングに加え、アジア・パシフィック13か国で培った顧客基盤へのアクセスをスタートアップに提供し、NUSはインキュベーションスペースなどを提供。

 

 2016年12月から2017年6月までプログラムが実施される予定だ。

 

 

4.未来のモビリティ開発に反映可能なテクノロジーを求めるドイツ

 

 一方、ダイムラーのお膝元であるドイツのシュツットガルトで開催されたアクセラレータープログラムでは、自動車の研究開発に焦点が当てられている。

 

 2016年はIoT、生産技術、ロジスティクス、位置情報関連サービス、サイバーセキュリティ、生体認証、自然言語処理、プロセス改善、顧客体験、予測分析がテーマとして挙げられ、自動運転や未来の自動車開発に反映可能なソフトウエア・ハードウエアの技術やアイディアを持つスタートアップを募集している。

 

 ドイツでのプログラムでは、現地の教育機関との連携を目指してUniversity Stuttgart や研究開発所ARENA2036がプログラムパートナーとなり、プロトタイプ作りや少量生産も可能な最先端の研究開発の環境が提供される。

 

 2017年9月からは3期目のプログラムが開催される予定となっている。 各地域の戦略上の位置づけにより、プログラムでイノベーションを起こすことを狙るテーマの使い方を変えている。

 

 

5.イノベーション創出手法も地域で使い方を変える

 

 ダイムラーは自社におけるシンガポール・ドイツの戦略的位置づけに合わせて、アクセラレータープログラムのテーマやメンタリング体制も変えて各地域で求められる成果の実現を目指している。

 

 グローバルに複数地域でアクセラレータープログラムを実施する企業も増えてきたが、複数地域でそれぞれ異なるテーマでプログラム運営するというケースは現段階では多くはない。

 

 オープンイノベーションの取り組みもグローバルで複数地域にてプログラムを進めるというだけでは不十分で、きめ細かく地域の位置付け/目指す目標に合わせてテーマや運営形態を変えていくという緻密なプログラム設計が効果を生むプログラムとしていくために求められ始めている。

 

 

 

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

INNOVATION SOLUTIONチーム

 

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種での新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業における新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

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