イノベーションを生み出す組織でデジタル化に取り組む仏化粧品ロレアルの事例

仏化粧品大手ロレアルに学ぶオープンイノベーションの取り組み事例

 

 仏化粧品大手のロレアルは、全社的にデジタル対応の取り組みを推進し、3年間で大きな変貌を遂げている。

 

 AR、3Dプリンティング、IoT関連商品の開発や、デジタルマーケティング分野で成果を挙げ始めている。その陰には、全社でデジタル化への強いコミットメントを共有し、確かな成果を追い求めるスピード感が息づいていた。

 

 協業、出資からアクセラレータープログラムまで、様々な打ち手でオープンイノベーションを押し進めるロレアルの足跡を追う。

 

 

1.ロレアルのイノベーションを生み出す組織

 

 あらゆる業界でデジタル化が求められている中、短期間で全社的な変化を実現し始めているのが、仏化粧品大手のロレアルだ。

 

 その成果と戦略は、具体的な数字として表れている。 ロレアルのアニュアルレポートによると、自社製品のオンライン販売に携わる従業員は、2010年から2015年にかけて6倍に増加。1,000名を超える体制となっている。

 

 オンラインにおける販売金額は、ロレアルの売上トップ5位のブランドと同程度の売上に相当するまで成長しているという。

 

 こうした急ピッチでの変革と組織作りを可能にしたのが、チーフデジタルオフィサーによるトップダウンのイノベーション推進だ。

 

 チーフデジタルオフィサーとしてLubomira Rochet氏が就任したのが、2014年で、長年デジタル戦略や事業開発に従事し、マイクロソフトではスタートアップとの協業の統括も行ってきた人物だ。

 

 同氏のデジタル領域での知見と経験を活かし、デジタル化推進に取り組む組織のトップとして既存製品の販売強化からスタートアップ企業のインキュベーションに至るまで、ロレアルのデジタル化/イノベーションを主導している。

 

 またトップダウンの方針を徹底するため、経営陣へのデジタル化の意識の浸透を図り全社的に組織としてイノベーションを推進できるように体制を構築している。

 

 チーフデジタルオフィサー主導で、経営陣向けのトレーニングやEラーニングを開催している他、役員向けにスタートアップ企業やデジタルネイティブ世代との交流会をセッティングして、新しいイノベーションを生み出す組織作りの推進を後押ししている。

 

 

2.協業、出資、アクセラレータで商品化の種を蒔き続ける

 

 ロレアルのデジタル化は、既存商品の販売強化の取り組みにとどまらず、IoT領域での新たなプロダクト開発に取り組んでいる。

 

 ロレアルは、外部にパートナーを求め、オープンイノベーションによってIoT領域での新たな事業開発に取り組んでおり、その打ち手は、出資、協業、アクセラレータープログラムに至るまで幅広い。

 

 例えば、Partech International Venture VIIへの出資を通じて、デジタル・美容分野のスタートアップ企業への純投資を行っている。

 

 その他にも協業の取り組みとして、Oraganovo社との協業によって生まれたのが、3Dスキンプリンターだ。スキンケアの研究開発は、長年動物実験によって行われてきたが、倫理的観点からすでに1980年代から人の肌の提供による実験に切り替えられてきた。

 

 こうした開発環境は、新商品開発の一つの障害となってきたが、バイオプリンティング会社との協業によって、人の肌に近い肌を再現することができるようになったのだという。このような開発環境の改善は、ロレアルの既存の化粧品開発全般を底上げするインパクトを生んでいる。

 

 また、今年に入って発表されたのが、Nokia傘下のWithings社と共同開発したスマートヘアブラシだ。センサーが取り付けられたブラシは、髪の毛の状態を診断する事ができ、受信された情報をもとに、髪の状態に合わせたヘアケア商品をスマートホンで提示する。消費者は、より正確な情報に基づいて、適切な商品を知る事ができる。

 

 このように、IoT商品は、ロレアルの商品に大きな付加価値を与えるフェイズに入っている。 さらに、純投資や個別協業の取り組み加えて、アクセラレータープログラムによるスタートアップの発掘と協業にも取り組んでいる。

 

 2016年より、Founder Factory社と共同で、「パーソナライゼーション」をテーマに、スタートアップ支援に取り組んでいる。選出されたスタートアップは、Founder Factory社のメンターシップを受けられる他、ロレアルの研究者の科学的知見の提供、マーケティングやイノベーションの部署からのサポートが得られる。

 

 180社あった応募より選ばれた5社を、以下紹介しよう。

 

  InsitU

個人一人一人に最適化されたスキンケアサービス。核医学の知見を有する科学者が創業。

 

  Cosmose

ポーランド人の起業家が立ち上げたマーケティング支援サービス。ロケーションテクノロジーを活用して、オフラインビジネスの顧客向けへのマーケティング支援を行っている。

 

  Preemadonna

スマートフォンを使って、誰でも手軽にネイルのデザインとプリントが行えるデバイスを提供している。

 

  Veleza

一人一人のニーズと好みに合わせて、コスメをマッチングさせる美容アプリ。

 

  Tailify

ブランドとSNS上のインフルエンサーを繋げるマーケティング支援サービス。

 

 アクセラレータープログラムを活用して、スタートアップとのIoTプロダクトの開発に取り組んでいるロレアルだが、すでに協業によってIoTプロダクトの事業化の例が出ている。

 

 ロレアルは、すでに一般に想像されている化粧品というイメージ以上の「テックカンパニー」へと進化を続けていると言えるだろう。

 

 

3.組織として進めるオープンイノベーションの仕組み化

 

 ロレアルのデジタル化の取り組みやオープンイノベーションの取り組みは、明確に成果を求める姿勢が特徴的だ。

 

 スタートアップとの協業、新しい事業領域への着手は、リスクが高いこともあり、短期での成果を強くは求めない事も多い。

 

 しかし、ロレアルは直近の3年間で、デジタル化による既存商品の販売強化、数々のIoT商品の事業化に実際にこぎつけているのだ。

 

 2015年度には、Eコマース領域で、37.9%の売上の伸びを記録したという。その成果を可能にしているのは、チーフデジタルオフィサー設置した組織によるトップダウンでのイノベーションに対する強いコミットメントだ。

 

 既存商品の販売強化、デジタルメディアによる拡散といった現実的な施策から、経営陣へのトレーニング、そして協業・投資・アクセラレータープログラムによる商品化の種まきに至るまで、その打ち手の多さ、スピード感こそが、ロレアルのデジタル化推進の原動力となっている。

 

 イノベーション創出にトップダウンで組織として取り組む事で、全社でのスピード感を持ったコミットメントを実現しているロレアル。オープンイノベーションの仕組み化に成功したモデルケースと言えるだろう。

 

 

 

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

INNOVATION SOLUTIONチーム

 

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種での新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業における新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

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