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新しい音楽ビジネス創出を目指すアクセラレータプログラムTechstars Musicの事例


音楽業界初のコンソーシアム型アクセラレータプログラム事例

  アメリカの大手アクセラレータ―Techstarsが、音楽をテーマにしたアクセラレータプログラムTechstars Musicを開始する。

 音楽レーベル、イベント会社、オーディオシステムメーカー等8社が参画する、音楽業界初の幅広い分野でのイノベーション創出を目指したコンソーシアム型のアクセラレータプログラムの事例を紹介していきたい。

1.構造変化の激しい音楽業界のスタートアップビジネスの不調

 音楽業界はこの10年程度の期間で大きな変動をいくつも経験してきた。長らく続いた音楽レーベルによるCD販売中心のビジネスから、iTunesなどの有料ダウンロード配信へ移行が進み、最近ではSpotifyなどが手掛けるサブスクリプションの定額ストリーミング配信が勢いを増している。

 IFPI(国際レコード・ビデオ製作者連盟)によると、グローバルでの音楽業界での収益が2015年にCDなど物販の収益58億ドルに対して、デジタルの収益が67億ドルとなり、ついにCD販売を上回った。

 その一方で、ここ数年音楽ビジネスに関するイノベーションは停滞気味と言われている。SpotifyやPandoraなどのようなストリーミングサービスの成長は続いているモノの、それに続く各種ライセンスを持つ音楽レーベルを巻き込んだ、スタートアップ発の新しいイノベーションが生まれにくい環境になっているというのがマーケットの認識だ。

2.音楽ビジネスをテーマにしたコンソーシアム型プログラム

 このような音楽業界のイノベーションが生まれにくい閉塞的な状況に風穴をあけるべくスタートしたのが、2017年2月にキックオフ予定のアクセラレータプログラムTechstars Musicだ。

 Techstars Musicでは、従来のアクセラレータプログラムのように単独のスポンサー企業による実施ではなく、音楽レーベル、ライブ/イベント運営、ゲームスタジオ、オーディオメーカーなど音楽業界の様々な領域からスポンサー企業が参画する予定となっている。

 コンソーシアム形式で運営/選出スタートアップにメンタリングを行うことで音楽業界の幅広い領域で新たなビジネス/イノベーションを生み出すことを試みようとしている。

【Techstars Music参加スポンサー企業】

音楽レーベル

アーティストマネジメント/ライブイベント

ゲームスタジオ

家庭用オーディオシステムメーカー

3.「音楽ビジネス」の概念をライセンスビジネスから広げることを目指す

 TechstarsのBob Moczydlowskyは、今回のプログラムの狙いのひとつは「音楽ビジネス」という概念自体を広げることだと述べている。

 これまで音楽ビジネスとは、音楽レーベルが権利を売るライセンスビジネスだと捉えられることが多く、スタートアップや投資家の興味を惹きつけることが難しかった。

 しかし、音楽業界の構造変化は否応なく進んでおり、デジタル配信の収益がCD販売による収益を上回る状況では、従来のCD販売を中心としたビジネスモデルのみでビジネスを維持することは早晩困難になるという状況となっている。

 音楽レーベルも新たな収益モデルの構築の可能性を求めてスタートアップとの協働によるイノベーション創出を求めるようになっている。

 ライセンスビジネスに留まらない新たなビジネスモデルを作り出すべく、音楽業界でのイノベーション創出を目指していこうというのが今回のプログラムの根底にある考えだ。

4.幅広い事業領域の参画企業と共に多様なテーマでイノベーション創出

 Techstars Musicはスタートアップを募集するテーマとして以下の9つを挙げている。

いずれも、既存の音楽業界のビジネスを広げることが可能なソリューションであることが必要だ。

・家や車内、イベント会場などでのモバイルや連携デバイスでの新しい音楽体験

・音楽やビデオの創作/コラボレーション/シェア

・音楽コンテンツのインフラや配信

・ロイヤリティやライセンス管理

・データマイニング、機械学習/AI

・アーティストの発掘やコンテンツのキュレーション

・デジタル世代への音楽教育

・アーティストとファンをつなぐソーシャルプラットフォームやゲーム

 プロ・アマ含めたアーティスト育成・発掘からコンテンツ創出・配信、ユーザーへの音楽/体験の提供など幅広い音楽業界のバリューチェーン上での新たなイノベーションを生み出すことを目指したテーマ設定となっている。

 単独の企業が展開するにはあまりにも広い領域となっているため、音楽業界の関連する領域から複数企業がコンソーシアムを組んでアクセラレータプログラムを運営するというのは合理的な方法と言えるだろう。

 複数企業がコンソーシアムを組むことで幅広いテーマでのスタートアップの募集を行うことが可能になり、スタートアップにとっても音楽業界の幅広い領域で大手企業と協業できる可能性も提供され魅力的なプログラムとなっているのではないだろうか。

 加えて、プログラム運営側にとってはコストを参加企業で分担できるので1社当りの負担を軽くすることができるというのも大きなメリットになる。

 このように自社単独では事業領域が限られ、アクセラレータプログラムによるオープンイノベーションが費用対効果に見合わない業界の企業でも、複数企業とコンソーシアムを組んでプログラムを運営することで負担を抑えて実施することが可能になる。

 加えて、幅広い領域からスタートアップの参加を促すことも可能となり、コンソーシアムによるアクセラレータプログラムは新しいオープンイノベーションの形として検討する価値のある取り組みとなるのではないだろうか。

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

INNOVATION SOLUTIONチーム

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種での新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業における新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

 
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