インドで独Boschが仕掛ける新しいビジネスアイデア創出のオープンイノベーション

製造業変革期を迎えるインドにIoTで挑むボッシュのオープンイノベーション

 

  独自動車部品メーカー最大手のボッシュは、自社初のアクセラレータプログラムの開催地として、インドを選んだ。

 ボッシュのアクセラレータプログラム「DNA」の狙いとインドIoT市場開拓の勝算とは?

 

 

1.自動車部品メーカーとして盤石の地位を築くボッシュ

 

 独自動車部品メーカーのボッシュは、グローバルでの自動車部品最大手の一角を占める会社である。年間売上は実に9兆円以上で、フォーチュン500では87位にランクイン。年間特許出願数は年間5,000件と名実ともにトップに位置付けられる。

 

 ドイツの自動車産業と共に育ってきた会社として知られるボッシュだが、近年では自動運転・IoTなどの新分野での売上が伸びており、自動車だけではない多様な業界への広がりを見せる先端領域での事業拡大も進んでいる。

 

 

2.リスクヘッジとしてのオープンイノベーション

 

 部品メーカーとして発祥したボッシュだが、現在は「モノづくり」だけで競争力を保つことができる時代ではなくなっており、自社を「モビリティ・ソリューション」を手がける会社と定義付けを行い、自社の持つ技術を様々な領域に横展開を図っている。

 

 クルマに関わる領域だけではなく周辺領域での環境整備にも注力しており、その領域は、「スマートマニュファクチャリング」や「スマートシティ」といった領域にまで及んでいる。

 

 ボッシュが事業領域の横展開を急ぐ理由として挙げるのは、様々なスタートアップ企業の技術/サービスによる「既存の事業領域での破壊的イノベーション」への備えだ。

 

 イノベーションは、自社が起こすことができれば大きな機会となるが、競合他社やスタートアップが自社に先んじて起こしたものは、既存事業を脅かす大きな脅威となる。

 

 すでに事業展開を行っている各領域でトップ企業としてのポジションを確立しているボッシュも将来、既存市場の競争ルールを覆すような新たな技術/サービスを展開する競合/スタートアップ企業が市場参入し、既存領域の優位性が脅かされる事態に備えて、先手を打とうとしている。

 

 それは言うなれば、「リスクヘッジとしてのイノベーション」だ。

 

 

2-1.

ボッシュ勝負の地は製造業変革期のインド

 

 ボッシュが新しいビジネスアイデア、新規事業の核として掲げるのがIoT分野だ。自社が手がけたプロダクトの価値を高めていけるIoTに取り組んでいく戦略は、各メーカーがこぞって注力する分野だが、ボッシュはその立ち上げの拠点として本社がるドイツではなくインドを選んだ。

 

 なぜインドであったのか? 現在のモディ政権下のインドでは製造業の変革を進めようと様々な制作を打ち出しており、Make in India政策や外資規制緩和などの外資誘致の促進、Start-up India政策など様々な製造業/スタートアップ支援政策を矢継ぎ早に打ち出しており製造業の生産性向上が急速に進展していく兆しが見え始めている。

 

 また、これらの製造業の変革に加え、IT系スタートアップも数多く立ち上がっており、ボッシュはインドをIoT領域の戦略的な重点エリアと見なしている。

 

 

2-2.

ボッシュ肝入りのIoTアクセラレータ「DNA」

 

  ボッシュが、インドIoT分野で勝負するためにスタートしたのが、IoT特化アクセラレータの「DNA」だ。DNAは、「Discover」、「Nurture」、「Align」を意味する。有望スタートアップを発掘し、育て、連携するボッシュの戦略を明確に示すコンセプトだ。

 

 プログラムはITスタートアップが集積するバンガロールを開催地とし、18週間と比較的長い期間に渡り開催される。選出されたスタートアップは、ボッシュの最先端の技術と開発環境を活用しながら持続可能なビジネスモデルの構築を目指す。そして、ボッシュはプログラムを通じてスタートアップとのアライアンスの深化を目指す。

 

 第一回のプログラムの応募、2016年11月20日までで閉め切られているが、締切以前にも、すでに昨年5月から6回のピッチ・デーが設けられるなど、ボッシュがスタートアップ選出に賭ける意気込みが伝わる取り組みとなっている。

 

 

3.破壊的イノベーションを起こされる前に自ら起こす

 

 企業がオープンイノベーションに取り組む事は、既に新規事業/新規サービスを創出する手法の一つとして定着をしてきており決して珍しい取り組みではない。

 

 ボッシュが2016年にスタートした「DNA」というアクセラレータプログラムもタイミングとしては、早くはないであろう。しかし、自社初のアクセラレータプログラムの開催地として、本社を有さない国をあえて選んでいる点が興味深い。

 

 ボッシュが影響を受ける可能性がある破壊的イノベーションが生まれる可能性がある地を、自社の拠点を有するドイツ/欧州やシリコンバレーではなく、製造業の革新が進み始めたインドと定め、先んじて自らインドでのIoT領域での新規事業創出に先手を打ち始めている。

 

 攻撃こそ最大の防御という発想で、自社に脅威となるイノベーションが生まれる可能性がある地域/領域で、自社のポジションを脅かす競合やスタートアップが立ち上がる前に、自らが先に破壊的イノベーションを起こして、脅威となる芽をつぶすことを目的の一つとして取り組む。

 

 オープンイノベーションの実施理由の全てではないとしても、破壊的イノベーションの先取りというのはオープンイノベーションに取り組む意義に悩む企業にとっての、有力な理由付けの選択肢となるだろう。


 

 

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

INNOVATION SOLUTIONチーム

 

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種での新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業における新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

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