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  • 執筆者の写真東條貴志/Takashi Tojo

スタートアップをパートナーとする協業を成功に導く4原則


スタートアップとのオープンイノベーションを進める上で意識すべきこと

近年のオープンイノベーションという言葉がメディアでも広く取り上げられるようになり、業種を問わずスタートアップ企業と大手企業の協業も珍しくなくなってきた。

 様々な取り組みを開始したという事例が登場してきているが、その後、大きく協業の取り組みがビジネスとして成功したということを聞く機会はまだまだ少ないように思われる。

 形としてのオープンイノベーションによる協業機会を模索する動きは一般化し始めているが、そこからどう具体化していくかについてはまだまだ各社試行錯誤の段階である。

 筆者も過去10年近く新規事業の支援に携わってきた知見から見出した、形だけのオープイノベーションから抜け出し、スタートアップとの協業による事業立ち上げを成功裏に進めるために求められる4つの原則を見ていきたい。

1.スタートアップの探索を他社任せにせず積極的に関与する

 協業を模索する際には、対象とする事業領域で連携可能なスタートアップを探索することになるが、数多存在するスタートアップ企業から組むべき事業者を探し出して特定することは担当者にとって極めて重い負担となる。

 そこで多くの企業はスタートアップ企業の探索を外部のネットワークを持つコンサルやVCなどに依頼することになるが、その際の自社の担当者の関わり方についてはよく考えることが必要である。

 協業先スタートアップ企業の目利きを外部専門家に依頼した場合、対象領域の知見深い担当であれば問題ないが、依頼先の担当の知見が薄い領域だった場合、まともな目利きができずに、あまり組む価値のない先を大量に紹介されるということもよくある。

 各専門家も自社のネットワークを持つことをアピールするが多分にポジショントークが入っていることを意識することが必要である。

 どうやってスタートアップを開拓するか、その際の目利きをどう行うかを大手企業の担当者側が積極的に関与して、外部の目利きに過度に依存せず開拓していくことが、自社にとって的確なパートナーを確保するために必要となる。

2.スタートアップを上から目線ではなく対等なパートナーとして取り組む

 大手企業の担当者がスタートアップとの交渉に臨むと、スタートアップ側の企業規模、担当者の若さなどから対等なパートナーと見なすことが難しいと感じてしまうことも多いだろう。

 とくにこれまで外部のベンダーなどを使ってきた大手企業の担当者の場合、外注先と同じような感覚で扱ってしまうということもよくある。

 スタートアップ側も自分たちのビジネスを持っており、他にも協業検討先を持つ中での協業検討となるので、自社にとってのメリットを作ることは当然だが、スタートアップのビジネスにとってもメリットがあるWin-Winの関係を作れることが協業の大前提となる。

 具体的な協業条件を詰める際には自社のメリットを一方的に追及して判断するのではなく、スタートアップ側のメリットも意識した上で交渉条件を設定して協議を行うことが必要となる。

3.スタートアップと組めばうまくいくという過剰な期待を抱かない

 前述の対応と逆に、スタートアップとの協業行うことで生まれる新規事業/新規サービスに過剰に期待をし過ぎてしまうというケースもよく見られる。

 スピーディに小回りを効かせて新たなサービス立ち上げをできることがスタートアップの強みだが、いざ協業してみると思ったほどのスピードで新規サービスや事業が立ち上がらないという場面に直面する大手企業の担当者も多い。

 どうしても大手企業側は自社との取り組みのためにスタートアップが全力投球してくれると期待しがちだが実際にはスタートアップ側にも自分たちのビジネスがあるため、そうならないことも多い。

3-1.

スタートアップにとって優先順位の低い取り組みになっている

 別途、本業のサービスをスタートアップは持っており、あくまで協業は本業のサービスを加速するためという思惑があるので全力投球とはならない。

有望/実績のあるサービスを展開しているスタートアップの場合は、NDAに反しない範囲で他社との協業を並行して行っていることも多いので、自社との取り組みの優先順位はどうなっているのか確認しなければならない。

 お互いビジネスで取り組んでいるため、協業を深化させたいのであれば自社の取り組みの優先順位を高めるために、スタートアップの本気度を高めるためのメリット提供を考えることが必要となる。

3-2.

スタートアップのリソースを超える要求を行っている

 スタートアップ側でも全力で取り組みを行っているが、思ったほどのスピード感で事業/サービスが立ち上がらないということもよく聞く話である。

協業により新しいサービスを立ち上げる際に、スタートアップの持っていない新たなケイパビリティが必要となることも多い。その点を考慮せずに、事前に聞いていた従来のサービスの立ち上げ/成長スピードを想定していると全くの期待外れということは多い。

スタートアップ側も既存サービス/技術などがそのまま使えればスピーディーな協業サービスの立ち上げが期待できるが、新たなケイパビリティが必要となった場合にはヒト/技術のリソースを新たに追加することが求められる。

しかし、スタートアップ側に追加リソースを用意する余力がないということも多いのでいつまで経ってもサービスが立ち上がらないということになる。

 現実的な取り組みとするために、協業での取り組み内容と、それに対するスタートアップのリソース/ケイパビリティを正確に見極めて新事業/サービス立ち上げを進めることで期待値と実際の乖離を縮めることが必須である。

4.スタートアップと協業することを目的化しない

 スタートアップの協業を新しい取り組みとして進めていくと、事業部門との連携も進めていく形になるため、ある程度大きな取り組みとなる。場合によっては全社的な取り組みの一環として協業が位置付けられて社内でも大々的に告知をして進めていくことも多いだろう、

 しかし、実際に協業を進めてサービス/事業開発を行い、実証実験を進めていくものの期待した事業に育つ見込みが見えないという状況になることもある。

 本来であれば、そういった状況が見えた段階でリーンスタートアップ的に取り組み内容を大幅に修正(ピボット)を試みるか、協業を打ち切るかするべきであるが、社内的にも大きく告知してしまったがために、なかなか見切りができずにゾンビ化した状態で続けてしまうというのは避けることが必要である。

 協業を決め、社内的に告知する際に事業を進めることばかりに気が行ってしまうことが多いが、始める段階で同時に見切りをどうつけるかというKPIを設定し、協業することを目的化せずに「収益化/拡大見込みがないならストップ」するための明確な基準を設けることが必要だろう。

 開始当初に見切り方を同時に設定するのは成功に全力を傾ける担当者の心情的には難しい部分はあるが、ビジネスとしてのドライな評価という目線は必要であろう。

 

まとめ

 スタートアップとの協業は、とくに社内での技術開発/事業開発中心に進めてきた大手企業にとっては未知の取り組みとなることが多いので過剰な期待や上から目線対応にとならないように、ドライかつ対等に付き合ってビジネスのメリットを追求すること必要であろう。

 取り組み初めの段階でどのようにスタートアップを使いこなしていいか不安を感じる場合には、外部の新規事業立ち上げ支援に実績のある外部パートナーを起用することも選択肢となる。

 

執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

執行役員パートナー 東條 貴志

スタートアップでの新規事業立ち上げや事業責任者などの経験と、アーサーアンダーセン、ローランド・ベルガーなど複数ファームでの10数年のキャリアに基づく先端領域における大手企業の新規事業・イノベーション創出支援やAI/機械学習を活用した事業創出/業務改革に多数の経験を有す

 
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