AIコンシェルジュ活用で顧客体験の充実と収益増を目指す海外ホテル事例

AIを顧客体験向上の武器とすることを目指す海外ホテル

 

 国内でのホテル業界でのAI活用と言えば、変なホテルが注目を集めるが、海外に目を転じると大手ホテルチェーンやラグジュアリーホテルも含めて宿泊客へのホスピタリティを向上させるべく、様々な取り組みが進み始めている。

 

 今回は海外でのホテル業界におけるAI活用の取り組みについて事例を紹介していきたい。

 

 

1.ヒルトンがフロントデスクで導入したAIコンシェルジュConnie

 

1919年にアメリカ合衆国で創業されたヒルトンホテルは、現在世界90か国以上に展開している大手ホテルチェーンだが、宿泊客の滞在中の体験を向上させるべく様々なテクノロジーを活用に積極的に取り組んでおり、2016年から宿泊客に新たな体験を提供するべくAIコンシェルジュの導入を試み始めている。

 

 ヒルトンホテルは、”Connie”というAIロボットをフロントデスクの脇に配置し、コンシェルジュとしての活用を試みている。ConnieはIBMの「Watson」の自然言語処理を活用しており、話しかけると挨拶はもちろん、周辺の観光地やレストラン紹介、ホテルに関する質問への回答、ホテルのサービス紹介などを行う。

 

 若干ぎこちないやり取りとなることもあるが、Connie宿泊客とコミュニケーションを重ねることで宿泊客からの質問内容を学習し、回答精度を高めていくことを目指して設計されている。

 

 

 

2.ヒルトンがAIロボをフロントデスク脇に置く背景と現状の成果

 

 ヒルトンは宿泊客の滞在をより快適なものとして、ブランドに対するロイヤリティーを高める一助としていきたいと考えてConnieの導入を進めている。

 

 フロントデスクの混雑などで、スタッフのサービスを受けるのに時間がかかってしまう場合や、コンシェルジュに聞くほどの内容ではないが観光やホテルについて情報が欲しいときに、ほどよく快適なサービスを提供する役割を担っている。

 

 さらにヒルトンは、Connieと宿泊客の対話の記録を確認/解析することを通じて、どのようなやり取りが宿泊客と頻繁に行われたのかを把握することができ、それらを基にスタッフのサービス改善にもつなげて、サービスの質を高めることも目指している。

 

 Connieの導入により、ヒルトンではConnieとの対話を通じた情報提供だけではなく、スタッフのサービスも高めることにより宿泊客のホテル滞在中の体験をより良いモノとしいくことを実現している。

 

 

3.ラスベガスのホテルが導入したホテルの世界観を作るAIボット「Rose」

 

 ザ・コスモポリタン・オブ・ラスベガスは米国ラスベガスのカジノホテルで、2010年に開業し、3,000室以上の客室を備えるホテルの他にショッピングモールやコンドミニアムも展開している。

 

 同地の他のホテルの宿泊客と同様に、同ホテルの宿泊客もカジノやホテル内でのエンターテインメントを楽しむために滞在している。

 

 ザ・コスモポリタン・オブ・ラスベガスでは一層の収益拡大を目指して12週間に渡り、宿泊客の支出増大に不足しているモノが何かを調査している。その結果、宿泊客がホテルでの滞在中にザ・コスモポリタン・オブ・ラスベガスで提供される様々な施設、アクティビティやサービスを、宿泊客自身が見つけ切れていないために支出増につながっていないという結論に至った。

 

 そこでザ・コスモポリタン・オブ・ラスベガスで提供されるカジノホテルならではの様々な体験を、宿泊客がホテルの世界観の中で自身で興味を持って発見して、サービスを利用していくことを促す仕掛けが必要だと判断し、自社開発のチャットボット”Rose”を導入した。

 

 魅力的なチャットボットとの対話を通じて、宿泊客にVIP客が味わうような体験を提供し、滞在中により深くホテルでのサービスを楽しんでもらい、もう一度、宿泊して体験したいと思ってもらうことでリピーターを増やすことを狙っている。

 

 ”Rose”はただのチャットボットではなく、ザ・コスモポリタン・オブ・ラスベガスの世界観を象徴するかのような、ミステリアスで挑発的な雰囲気をまとったチャットボットとして宿泊客との対話を行う。

 

 ゲストはチェックインすると、”Rose”の電話番号が書かれたカードが渡される。書かれた電話番号に電話をかけることで、SMSにより”Rose”とスマホで対話ができるようになる。

 

 ”Rose”は事前の調査により、宿泊客が特に興味を持つようなアクティビティの体験ができるような対話を中心に用意されており、Roseとの挑発的でミステリアスな対話を通じて、レストランやスパ、イベントチケット、各種ツアーなどの予約ができるように1,000以上の対話メニューが用意されている。

 

 単純なチャットボットを導入しているホテルもあるが、特にザ・コスモポリタン・オブ・ラスベガスがこだわったのは、カジノホテルとしての世界観を醸し出すように”Rose”にミステリアスな性格を持ったガイドとなるように対話を作っている。

 

 ”Rose”は宿泊客のミステリアスで魅惑的なガイドとして、友人とテキストメッセージを交わすように、長文ではなく短文で複数メッセージを送ることにこだわって対話が設計されている。

 

 例えば、宿泊客が「Rose、君の見た目について教えて」とメッセージするとRoseは「あなたにとっては高嶺の花よ。もっと楽しみたい?『楽しませて』と返事して。期待に応えてあげるから」とRoseは思わせぶりな返信をする。

 

 そこで宿泊客が「楽しませて」とメッセージを返すと、Roseは「どんな風に楽しみたい?カジノ、イベント、プール?」と自然にコスモポリタンホテルの施設やアクティビティを薦める話題へと移っていく。

 

 こうした形でRoseが導入されて以降、宿泊客一人当たりがが滞在期間中にRoseに送るメッセージ数は平均で7.7通、何らかのアクションを起こすエンゲージメント率は82%、90%のユーザーがRoseを推奨し、98%のユーザーがRoseに満足したという回答をしている。

 

 さらにRoseを利用しなかった宿泊客と比べて、Roseを利用した宿泊客は滞在期間中の支出が39%も増加し、収益の増加にも大きく貢献をしている。

 

 

4.利用するサービスを自ら発見してもらう仕掛けとしてのAI

 

 今回紹介したホテル業界での2つのAI活用事例は、本来であればヒトであるスタッフが提供するべきサービスではある。しかし、多くの宿泊客が滞在する中でスタッフの人数には限りがあり、求められるタイミングでサービスを提供することができないことも多く、宿泊客の滞在の満足度の向上や、ホテルの提供するサービスを知って、利用してもらう機会を得られず、機会損失となっていることも多い。

 

 今回紹介したような宿泊客に寄り添うAIコンシェルジュをホテルとしてのブランド、世界観を壊すことなく提供することで、既存サービスだけではカバーできない宿泊客に対して満足度向上と収益の増大の実現ができるだろう。

 

 このようなAIコンシェルジュの取り組みはホテル業界に限らず、多くの接客を必要とするサービス業でも応用できるものであり、単なるAIボット導入だけではなく、サービスとしてどう設計するかの巧拙で、満足度向上や収益増だにつながる意味ある取り組みとなるかが分かれていくだろう。

 

 

 

 

 

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

AI/INNOVATION SOLUTIONチーム

 

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種でのAIプロジェクトの推進支援や新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業におけるAIプロジェクトを推進や、新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

 

監修者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

執行役員パートナー 東條 貴志

 

スタートアップでの新規事業立ち上げや事業責任者などの経験と、アーサーアンダーセン、ローランド・ベルガーなど複数ファームでの10数年のキャリアに基づく先端領域における大手企業の新規事業・イノベーション創出支援やAI/機械学習を活用した事業創出/業務改革に多数の経験を有す。

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