外食産業で進み始めたAIロボットの現場活用の海外事例①

外食産業で離陸しつつあるAIロボットの現場での活用

 

 国内の外食産業での人手不足感は毎年強まる一方で、これまで24時間営業を行っていた外食チェーンは営業時間短縮を進め、従業員も外国人労働者の活用などを進めるなど様々な取り組みが行われているが、今後もより一層の生産性向上の取り組みが模索されていくだろう。

 

 一方、海外では生産性向上に向けてレストランの現場で役に立つAIロボットの活用が模索されて始めており、その最新事例を紹介していきたい。

 

 まずは、ハンバーガーチェーン、カリバーガーの店舗で、パテをひっくり返しながら焼く、ミソ・ロボティクス社開発のAIロボット、フリッピーの活用事例。

 

 もう一つは、シリコンバレーのレストランやカフェで料理を運ぶ、ベア・ロボティクス社開発の自走AIロボット、ペニーの活用事例。 

 

 それぞれ、厨房での調理支援を行うロボとホールでの料理のサーブを行うAIロボットである。シンプルなロボットのどこにAIテクノロジーが活かされているのか、人とどう協働しているのかを明らかにし、レストランの現場で、実際にAIロボットを役立てるポイントについて考える。

 

 

1.外食産業におけるAI活用領域とAIロボットの可能性

 

 外食産業において、AI活用が期待されている領域は多様だが、現時点では実用化の途上にあるものが多い。

 

・レストラン情報の照会や食事の注文の際に顧客を支援するチャットボットやアプリ

・メニューから顧客の好みにあった食事を選ぶAIレコメンデーション

・待ち時間を削減し、注文処理量を増やすセルフサービスのAIキオスク

・調理や配達時間を短縮させるAIロボット

 

 この中で、外食産業の喫緊の課題であるレストランの店舗での人手不足やスキル継承の課題解決にAIロボットの活用が期待される。

 

 しかし、製造業などの生産ラインにおけるロボット活用の広がりに対して、外食サービス提供の現場におけるロボットの活用は、これまであまり進んでいないように見える。

 

 そこで、中小規模の店舗でAIロボットがすでに実用化されている海外事例を通して、レストランで実際に役に立つロボットのあり方と、そこでAI活用の可能性について、具体的に見ていきたい。

 

 

2.AIロボット活用で調理の効率化を図るハンバーガーショップ

 

 カリフォルニア・スタイルのハンバーガーチェーン、カリバーガー(CaliBurger)を展開するカリ・グループ(Cali Group Inc) は、2017年3月に、ミソ・ロボティクスとの提携を発表した。

 

 ミソ・ロボティクスが開発した店舗内調理用AIロボット、フリッピー(Flippy)を、2019年末までに、50以上のカリバーガー店舗に導入する予定である。

 

 カリフォルニアにあるカリバーガーのパサデナ店に行くと、リズミカルにハンバーガーのパテをひっくり返しては焼く、「見習い中の」フリッピーに会うことができる。

 

 フリッピーは、世界初のキッチンで調理を手伝う自動ロボットとしてリリースされている。

 

 フリッピーは、ハンバーガーのパテをひたすらひっくり返して焼き続けるという、これまでハンバーガーショップのキッチンスタッフの重要な業務だった調理業務を熟練のスタッフ以上の品質と効率で対応してくれる。 そのフリッピーを開発したのが、同じくカリフォルニアにあるミソ・ロボティクス (Miso Robotics) だ。

 

 ミソ・ロボティクスは、ロボットとAIを統合したソリューションを提供するスタートアップで、レストランや加工食品業界に革新を起こすことを目指している。

 

 ミソ・ロボティクスは、コンピュータビジョンとディープラーニングを行うAIを、フリッピーに低コストで組み込み、レストランにおける課題解決に取り組んでいる。

 

 

3.パテを焼くAIロボット「フリッピー」の仕組み

 

 フリッピーの外観は、6軸ロボットアーム1本の先に、金属製フライ返しが付いているだけの、シンプルなものだ。フリッピーの基本的な機能も、そのアームとフライ返しを使って、ハンバーガーのパテをひっくり返しては焼く、とシンプルである。

 

 ミソ・ロボティクスのウェブサイトによると、フリッピーの特徴は以下の通りである。

 

・1時間に150から300のバーガーを焼くことができる。

・コンピュータビジョン、3Dセンサー、温度スキャナーで、グリル上の食材とその状態を認識。

・クラウド接続で「ミソAI」によるモニター機能と学習機能を持つ。

・バーガーを焼く際にフライ返しからグリルの掃除まで全自動で行うことができる。

・OSHA(Occupational Safety and Health Administration. 米労働安全衛生局)準拠のセンサーでスタッフとフリッピーが安全に協働できる。

・既存店舗のキッチンレイアウトをロボットに合わせて変更する必要なく、キッチンスタッフの傍で、様々な調理作業を、安全かつ効率的に行う。

・連続100,000時間の稼働が可能。

・POSと連携して注文に応じた調理ができる。

 

 

 

 こうしたフリッピーの機能により、従業員のスキルに依存しない調理の効率化と高い調理品質の維持が実現でき、従業員は別の作業に注力できるため、店舗作業全体の生産性の向上が期待できる。

 

 さらに使うほどフリッピーのスキルが向上し、実施可能な作業も随時追加できることで、新たなメニュー追加によるオペレーションコストの削減も期待できる。

 

 

4.フリッピーの調理を制御するクラウドの頭脳「ミソAI」

 

 フリッピーが調理の現場でこれだけのことが柔軟に対応できるのは、クラウド上の頭脳であるミソ・ロボティクスの「ミソAI」に接続している点にある。

 

 レジでの注文が入ると、その情報がチケットとしてフリッピーに伝えられる。フリッピー(あるいはキッチンスタッフ)は、注文された数のバーガーの生のパテを、温められたグリルの上に置く。

 

 フリッピーは、生肉のパテ用のフライ返しから、焼けたパテ用のフライ返しに持ち替えて、フリッピーの目となる、3Dセンサーと複数のカメラによるコンピュータービジョンが、生のバーガーのパテがグリルのどこに置かれたかを検知し、温度スキャナーが、正確なグリル上の温度を測定して各パテの焼き具合をリアルタイムで自動モニターする。

 

 その情報をもとに、ミソAIはリアルタイムに次の調理の動作の判断を行う。パテの片面が焼けたら、フライ返しでひっくり返して裏面も焼き、同じグリル上でバンズ(パン)も両面焼いている。

 

 さらにキッチンスタッフが見る画面に調理時間を表示し、チーズをトッピングしたり、ドレッシングをかけたりするタイミングを知らせる。

 

 また、作り置きではなく、注文数に応じてバーガーを作るため、作り過ぎや不足は発生しない。そして、調理終了後には、フリッピーは掃除用のヘラに持ち替えて、グリルの表面をこそげ取り、きれいにすることまで行う。

 

 調理の間、フリッピーはフライ返しの他にも、アームの先に様々な調理ツールを持つことができ、食材を掴むグリッパーやトングなど調理の際に必要な様々な調理器具を使いこなし、バーガーのパテだけでなく、チキンやベーコン、玉ねぎなどの素材も調理することができる。

 

 この取り換えにより、フリッピーは注文されたバーガーの調理を、限られたグリルスペースで人が調理するのと同等以上の効率性で円滑に行なっていく。 こうしたフリッピーの動作がすべてクラウド上のミソAIで制御されている。

 

 ミソAIとフリッピーは、カリバーガーのレストランに配属された新米スタッフのように、どのように調理し、バーガーを扱うかのトレーニングを行ってきた。

 

 最初は、バーガーのパテをひっくり返しながら焼き、バンズの上に乗せることだけに集中した。フリッピーは、パテをひっくり返すといった一つ一つの動作を改良するために、自身の調理実績のフィードバックループを行っている。

 

 正しく定められた場所に配置された仕掛品や部品が整然と並べられて流れてくる組み立てラインで動作するロボットとは異なり、フリッピーの機械学習アルゴリズムは、まだ調理されていない雑然と並べられ、一つ一つの形が異なるバーガーのパテの山から、注文があった数だけ取り出したり、グリルの上のよく焼けたパテを選別してをひっくり返したりすることができる。

 

 またディープラーニングによって調理法を学習させることで、フリッピーは新しいメニューや、季節メニューなどの追加にも柔軟に対応することもできる。

 

 フリッピーのディープラーニングモデルは、バーガーを調理するために理想的なグリルの温度は何度か、といったキッチン装置に関するデータを使って作られている。

 

 このように、レストランの現場で長時間繰り返す作業について、フリッピーがキッチンスタッフの代わりに人との協働しながら調理を行っている。継続的に新しい作業の学習を行えば、食材を切ったり、揚げ物を行ったり、といった新しい作業もこなせるようになり、最終的には一品を仕上げるまでのすべての調理を全自動で調理できるようになるだろう。

 

 これまでの調理ロボットは特定料理、特定食材での調理の機械化といったレベルに留まっていたがミソロボティクスのフリッピーのように既存のキッチンの中において汎用的に調理ができるAIロボットの実用化の試みが始められている。

 

 特に人手不足による影響の大きい外食チェーンにとってはこのような調理におけるAIロボット活用の可能性も調理現場の生産性向上に向けて検討する時期に来ているのではないだろうか。

 

 今回は調理現場でのAIロボットの活用を見てきたが、次回記事ではホールでのAIロボットの事例について見て行きたい。

 

 

 

 

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

AI/INNOVATION SOLUTIONチーム

 

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種でのAIプロジェクトの推進支援や新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業におけるAIプロジェクトを推進や、新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

 

監修者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

執行役員パートナー 東條 貴志

 

スタートアップでの新規事業立ち上げや事業責任者などの経験と、アーサーアンダーセン、ローランド・ベルガーなど複数ファームでの10数年のキャリアに基づく先端領域における大手企業の新規事業・イノベーション創出支援やAI/機械学習を活用した事業創出/業務改革に多数の経験を有す。

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