戦略的なオープンイノベーションの取り組みの使い分けで成果を目指すBMWの事例

3つの仕組みで成果を最大化するBMWのオープンイノベーション戦略

 

 独自動車メーカーBMWは、グループで3つのオープンイノベーション推進の仕組みを並行して運用している。

 

 それぞれ狙いの異なるプログラムを運営し、目指す成果に合わせて様々なステージ、領域で事業展開を行うスタートアップとの連携を実現するプログラム運営を行っている。

 

 1つ目はBMW i Venturesで、先端技術を持つレイトステージのスタートアップを対象にCVCから出資を行う。BMWグループとの先端事業での協業を模索することを目指している。

 

 2つ目はアクセラレータープログラムURBAN-Xで、アーリーステージのスタートアップを対象に、スマートシティなどクルマ以外の領域での新たなビジネスモデル構築を目指す。

 

 そして3つ目はBMW Startup GARAGE。これは既に自社の技術/製品のプロトタイプを提供可能なスタートアップに対し、サプライヤーとしての取引を見込んだサポートプログラムを提供する。

 

 各プログラムは異なるステージのスタートアップを対象にしており、先端技術の探索やクルマそのものから離れた新事業領域の探索、既存のクルマ開発に即反映可能なサプライヤー開拓と位置付けを変えながら戦略的な使い分けを行い運営している。

 

 

1. 先端技術を持つレイトステージのスタートアップへCVCから出資

 

 BMWのCVC(Corporate Venture Capital)であるBMW i Venturesは、2011年にニューヨークで設立され、これまでに15以上のスタートアップへ投資を行ってきた。

 

 BMW i VenturesはBMWグループ全体のイノベーションの牽引役かつ最新テクノロジーのパイオニアと位置付けられており、自動運転やデジタル化対応、AIなど先端技術に関連するサービスを展開するスタートアップを探索して出資を行っている。

 

 現在のポートフォリオには相乗りアプリを提供するScoopや、電気自動車の充電サービスを手掛けるChargepointなどが含まれている。

 

 スタートアップとの関係は出資だけにとどまらず、BMWグループとの新たなサービス開発での協業も想定されている。

 

 前述のChargepointはBMWの充電インフラサービスであるChargeNowと連携しており、アメリカで既に95の充電ステーションを設置するという協業事例も生まれている。

 

 さらにBMW i Venturesは2016年には拠点をニューヨークからシリコンバレーに移し、ヨーロッパやアジアに加えて、広範囲で有望スタートアップの探索を進めている。

 

 

2.クルマ以外のスタートアップを対象にアクセラレータープログラムを運営

 

 URBAN-XはグループのMINIがアクセラレーターであるSOSVと共に運営するアクセラレータープログラムだ。

 

 14週間のスタートアップ支援プログラム中、参加スタートアップはニューヨークのワークスペースを利用することができ、そこにはエンジニアリング、デザイン、ファイナンスなど多様な専門分野のメンター陣がフルタイムで常駐してスタートアップのサポートを行う体制を敷いている。

 

 URBAN-Xでは「Engineering the city as a service」というテーマを掲げ、クルマという領域から飛び出して、クルマが活用される街全体を対象に新たなビジネスモデルの構築/イノベーションの創出を共に模索できるアーリーステージのスタートアップの募集を行っている。

 

 これまでに2回のプログラムが開催されており、第2回では大気汚染の影響をカットするマスクを開発するO2-O2、都市部での頻繁な不動産の動きを反映した地図を作成するCitiesense、デジタルな公共ゴミ箱TetraBINを開発するSencityなどが選ばれている。

 

 これらのスタートアップの顔ぶれを見ると、BMWがクルマだけでなく都市生活全体に領域を広げてイノベーションの種を探索しようとしていることが見える。

 

 第2回プログラムの最終デモは2017年5月4日に行われる予定で、並行して第3回目のプログラムへの応募も2017年3月までを期限に実施されている。

 

 

3.サプライヤーとしての取引先を開拓するプログラムを運営

 

 BMW Startup GARAGEは本社のあるドイツ・ミュンヘンを拠点とするプログラムだ。具体的にBMWグループと協業が可能なプロトタイプを持つ、アーリーステージから一歩進んだスタートアップを募集している。

 

 プログラムでの支援期間は12週間で、スタートアップはBMWの各領域のエキスパートによる講義や、プロトタイプ製作に必要なエンジニアや各種ツールなどの提供を受けることができる。

 

 プログラムに固定の募集期間は設定しておらず、随時応募が可能になっている。

 

 BMW Startup GARAGEはこれまでの二つのプログラムと異なり、探索するスタートアップの対象を現在のBMWグループの事業領域に限定している。

 

 全く新しいイノベーションを生み出すことを目指すのではなく、BMWの次のモデルのクルマに関して高機能化/高付加価値化につながる製品/サービス提供が可能な、実用的なサプライヤー候補としてのスタートアップを発掘するためのプログラムとなっている。

 

 

4.目指す成果に合わせたプログラム使い分けで戦略的にイノベーション創出

 

 オープンイノベーションへの取り組みを始めた企業では、とりあえずアクセラレータープログラムで幅広にスタートアップを集めて協業先や出資/買収先を模索してみたもののなかなか思うような成果につながらないということも多く聞かれる。

 

 BMWのように、まずは目指す成果で、発掘するスタートアップのステージ、事業領域、協業方針を変えていくということは、オープンイノベーションの取り組みの成果を高める一つの有力な手法となるだろう。

 

 既存事業を軸にその高機能化/高付加価値化を図るプログラム、先端技術/サービスを展開するスタートアップとの連携による既存事業の高度化を目指すプログラム、そして、既存事業を包含した隣接領域や飛び地領域での事業展開を行うスタートアップとの連携による全くの新サービスの創出を目指すプログラム。

 

 これらを組み合わせて実施することで網羅性を高めたイノベーション創出の機会を生み出すことができる。

 

 グローバルでは、アクセラレーターによる支援プログラムも含めると数百のプログラムが運営される中、スタートアップとの協業で成果を出していくためには、単一のアクセラレータープログラムなどの大規模展開ではなく、スタートアップのステージや自社の協業ニーズに合わせて複数のプログラムを同時進行で使い分けるという、きめ細かなプログラム運営も、オープンイノベーションでの成果を実現していくために今後は検討していくことが必要になるだろう。

 

 

 

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

INNOVATION SOLUTIONチーム

 

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種での新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業における新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

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