複数のイノベーションプログラムを組織的に運用して成果を挙げるBNPパリバの事例

BNPパリバが複数アクセラレータープログラムを組み合わせてサービス創出

 

 仏最大手の金融機関BNPパリバが、アクセラレーター「Plug and Play」と連携して新しいアクセラレータープログラムの開始を発表した。

 

 これまでにもBNPパリバの顧客企業とスタートアップの協業を支援する「Innov&Connect」、自社とスタートアップの協業を目指す「L’Accélérateur」など、BNPパリバが自社で独自のアクセラレータープログラムを展開してきたが、それに新たに加える形でPlug and Playとの連携によるアクセラレータープログラムを新たに始める。

 

 BNPパリバが、アクセラレーター「Plug and Play」との協業を発表" BNPパリバが、シリコンバレーのアクセラレーター「Plug and Play」と協働して、新たな起業家向けプログラムを実施すると発表した。

 

 2017年2月に発表された本プログラムでは、3ヶ月間のプログラムを年に2回実施する。対象はFintechとInsurTech(保険テック)のスタートアップであり、参加スタートアップはビジネスプランのコーチングや事業開発・資金調達の支援、Plug and Playの抱えるメンター陣によるメンタリングやBNPパリバとの協業検討の機会を与えられる。

 

 第一回の参加者を3月10日まで募集しており、4月18日よりプログラムがスタートする。

 

 「パリとシリコンバレーをつなぐ」と銘打った本プログラム。BNPパリバが実施にかけている狙いを紐解いていこう。

 

 

1.自社でのアクセラレータープログラムの展開を進めてきたBNPパリバ

 

 Plug and Playとの連携の発表以前からBNPパリバは、自社独自のスタートアップ向けのプログラムやオープンイノベーションに取り組んでいる。社内に「L'Atelier BNP Paribas」というBNPパリバグループのビジネスに影響を及ぼすテクノロジートレンドやイノベーションのタネを探索し、情報提供やアドバイスを行うシンクタンク的な機能を有する組織を設置しており、パリ・上海・サンフランシスコに拠点がある。

 

 とくにTransportation、Smart City、eHealth、Retail、FinTech、Digital workingでの情報収集に注力をし、アクセラレータープログラムの運営などオープンイノベーションの取り組み推進もL'Atelier BNP Paribasという組織が中心になって進めている。

 

 これまでにL'Atelier BNP Paribasの運営により、「L’Accélérateur」と「Innov&Connect」という2つのプログラムが組織的に運営されてきた。

 

 例えば、2015年より実施されてきたBNPパリバの独自のアクセラレータープログラム「L’Accélérateur」は、BNPパリバとFintechスタートアップとの協業を目指すアクセラレータープログラムだ。

 

 パリにFintech分野のHUBを作る事を目指しており、4ヶ月間かけてメンタリングや事業開発の支援をスタートアップへ行っている。このアクセラレータープログラムでは、BNPパリバグループの中でオープンイノベーションによる課題解決を目指す部門ごとにテーマを掲げて協業可能なスタートアップのプログラムへの参加を呼び掛けている。

 

また、さらに意欲的なプログラムとして、BNPパリバの顧客企業とスタートアップの協業機会を提供してイノベーション創出に挑むプログラム「Innov&Connect)」を発表して実施している。

 

 このプログラムでは、Innov&ConnectのWebサイト上にBNPパリバの顧客企業の概要と協業により解決したい課題と目指すイノベーションが掲載され、スタートアップはその課題を解決するサービス創出を目指している。

 

 Innov&Connectでは、例えば以下のような企業が参加し、課題を公開している。

 

  リテール会社Altaviaの顧客向けサービスの革新

 

  チョコレート会社Cémoiのデータ解析による生産過程の改善

 

  HR会社Critのデータ活用による人材マッチングの強化

 

  エネルギー会社ESのエネルギー貯蔵、管理分野の協業 

 

上記のように、BNPパリバには解決できない様々な顧客企業の課題を、スタートアップとのマッチングによって解決する事を目指すプログラムを提供している。

 

 参加するスタートアップとしても、潜在的な優良顧客との強い繋がりを得て、実際のサービス開発に取り組める環境が提供される魅力的なプログラムとなっている。

 

 L'Atelier BNP Paribasという組織ではこの2つのプログラムを共通の運営フォーマットで組織的に運用しており、テーマや対象は違えど共通の運営方法でプログラムを実施している。

 

 

2.自前プログラムに加えて外部アクセラレーターと協業

 

  こうした意欲的なアクセラレータープログラムに取り組んできたBNPパリバは、従来のプログラムに加えて、「Plug and Play」との協業によるアクセラレータープログラムにも取り組むことで、さらに幅広い領域でのオープンイノベーション推進を目指している。

 

 BNPパリバのCOOであるJacques d’Estais氏は、スタートアップ業界のエコシステムにおける自社のポジションを強化する事が、「Plug and Play」との恊働に踏み切った狙いであると語っている。

 

 顧客に対して、より高付加価値のプロダクトやサービスを届けていくために、オープンイノベーションへの独自の対応として取り組んできた 「L’Accélérateur」や「Innov&Connect」もその一貫だったが、よりオープンイノベーションでのサービス創出を加速させるためには、より幅広くスタートアップコミュニティとのコネクションを構築していく事が欠かせないと考えるようになったのだろう。

 

 シリコンバレーを拠点に強固なスタートアップとのコネクションを有する「Plug and Play」との協業は、BNPパリバが求めるスタートアップコミュニティとのコネクション、協業ノウハウを手に入れるために必要なアプローチであると考えたということだろう。

 

 

3.目的に応じてアクセラレーターを使い分けるBNPパリバ

 

 BNPパリバのCOOであるJacques d’Estais氏は、「Plug and Play」の取り組みが、これまでの「L’Accélérateur」や「Innov&Connect」といった取り組みを補完するものとなる事を強調している。

 

 「L’Accélérateur」にてBNPパリバグループ各部門の課題や実現を目指す新領域でスタートアップとの協業を実現するプログラムを提供し、「Innov&Connect」では、BNPパリバの顧客企業の課題をスタートアップとの協業で解決する場をL'Atelier BNP Paribasをコントロールタワーとなる組織として運営してきた。

 

 それらに加えてBNPパリバが、「Plug and Play」との協業によりFintech、InsurTechの領域全般という幅広いテーマ設定でスタートアップを募集し、BNPパリバ自身が思いもよらない新たなサービス創出していくことを目指す取り組みを実現しようとしている。

 

 アクセラレータープログラムによるオープンイノベーションの取り組みが多様化する中、課題や領域を絞り込んだプログラムと幅広なテーマ設定でスタートアップからの思いもよらない提案を求めるプログラムを実施し、一つのプログラムに頼らず、複数のプログラムを組み合わせて組織的に運用して成果の実現を目指す取り組みは、BNPパリバ/金融業界だけではなく、様々な業種の企業でも応用可能な取り組みとして今後広がりを見せる可能性があるのではないだろうか。

 

 そのためのコントロールタワーとなる組織を設置し、複数のイノベーションプログラムを包括的に運営していくという手法を進める企業が増えていくのではないだろうか。

 

 

 

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

INNOVATION SOLUTIONチーム

 

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種での新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業における新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

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