英Diageoの製品カテゴリ創出でCVCを活用してイノベーションを取り込む事例

英酒造大手DiageoがCVCの活用で酒類業界でのイノベーションを取り込み

 

 英酒造メーカーDiageoが、ロンドンをベースとするイノベーション創出ファームの「Independnet United」と連携してCVCの「Distill Ventures」を立ち上げて、酒類業界での製品イノベーションを起こすアーリーステージのスタートアップへの投資と支援を行っている。

 

 これまでDiageoが自社のみではなかなか探しだすことができなかったアーリーステージのスタートアップ探索を強化する事で、マーケットの変化を先取った製品投入を目指している。

 

 

1.英酒造大手DiageoによるDistill Venturesの立ち上げ

 

 スミノフ、ギネス、ジョニーウォーカーといったブランドで知られる英酒造メーカーのDiageoが、「Independet United」と連携してCVCの「Distill Ventures」の立ち上げを2013年8月に行い、現在まで継続的に、酒類業界のアーリーステージのスタートアップへの投資を行っている。

 

 自社で大きなリスクを取りづらい大企業が、スタートアップへの投資を行うCVCを立ち上げる動きは、決して珍しいものではない。

 

 しかしDistill Venturesの動きが注目されるのは、Diageoが250年を超える歴史を経て、初めてノンアルコール製品を含めたこれまでの製品カテゴリと異なる領域のイノベーション創出を目指したスタートアップへの投資を行っている点である。

 

 歴史ある酒造メーカーとして数多くのブランドを抱えている同社だが、先進国でのアルコール離れが顕著となってきていることに大きな危機感を感じていることが背景にある。

 

 例えば、イギリスでは政府統計によると、2002年から2012年の間で、同国のアルコール消費は26%落ち込んだという。

 

  Diageoは、消費者の嗜好の変化に対応した、新たな製品カテゴリの探索と取り込みを行うイノベーション創出組織としてDistill Venturesを活用しようとしている。

 

 Diageoによる投資を受けて、Distill Venturesの運営にあたるのは、イギリスのイノベーション創出ファームのIndependet Unitedだ。同社はイギリスに留まらずアメリカにもその取り組みを拡大し、スタートアップ支援のノウハウとネットワークを蓄積してきた。

 

 2013年の設立以降、ロンドンからヨーロッパ全体に活動範囲を広げており、ベルリン、コペンハーゲン、マドリード、ワルシャワにもネットワークを広げてきている。

 

 Distill Venturesは、設立後の2年半で900以上のスタートアップとコンタクトし、10程度のブランドに投資を実施している。

 

 アーリーステージのスタートアップへの投資額は25万ドル以上で、投資先には、飲料会社を世界にスケールさせていく知見、資金調達のノウハウを、エキスパートによるメンタリングを通して伝えている。

 

 

2. 独立した組織として動くことでスタートアップ発掘力を強化

 

 Distill Ventures特徴的な点は、Diageoからの出資がされてはいるものの、Distill Venturesの活動はDiageoから独立性が保たれた状態となっており、Diageoの意向などを確認することなく投資を行うことができるように運営されている。

 

 Distill Venturesは、あくまでも投資先の支援に必要と判断した場合に、Diageoからの販路やネットワークなどの利用で連携するという形になっている。

 

 Diageoの既存ビジネスのネットワークの中では見つけられないスタートアップを発掘するというDiageoの目的に照らして、敢えてDiageo本体からのノイズが入らないようにDistill Venturesを独立した意思決定が可能なCVCとして運営している。

 

 Distill Venturesの投資スタンスは、投資先へのコミットに5年から10年かけると明言しており、投資先候補の選定も時間をかけて世界で通用する新たなカテゴリを育てていく事を目指している。

 

  例えば、メルボルンで、オーストラリアウイスキーのSTARWARDをリリースするNew World Whiskey Distilleryへの投資を行う際には、Diageoの事業目標、世界でのブランド構築の道筋の共有に時間をかけて製品展開の考え方などのすり合わせを行い、投資決定までに1年以上の時間をかけている。

 

 その他にも、アルコールを飲まない層の拡大に対する新カテゴリとして、世界初のノンアルコールスピリッツを2015年にリリースしたSEEDLIPへの投資も行うなどDiageoの新たな製品カテゴリ作りに貢献する取り組みも進められている。

 

 CVCでトレンドの先取りを目指すべく、 Diageoは自力では探すことが困難な新カテゴリのスタートアップの探索、投資をDiageoからのコントロールを行わない形でDistill Venturesに任せることで新たな製品カテゴリでイノベーションを起こすスタートアップの発掘と取り込みを中長期で目指している。

 

 CVCを活用していても、新たなスタートアップ発掘/投資に際して、どうしても投資判断に本体の意向を組み入れてバイアスがかかってしまい、投資先に新味がなくなるというケースも多い。

 

 DiageoとDistill Venturesの取り組みのように、外部のイノベーション創出のスペシャリストにスタートアップの発掘の目利きを任せ切り、本体の意向が全く含まれずに選ばれたスタートアップから本体と連携/出資する先を選ぶという方法も、本体での期待を超えた有望なスタートアップを発掘するためには有力な選択肢になると考えられる。

 

 

 

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

INNOVATION SOLUTIONチーム

 

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種での新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業における新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

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