袖山晋/Shin Sodeyama
MIT(マサチューセッツ工科大学)が進める教育ビジネスのイノベーション
こんにちは!イノベーションソリューション事業部の袖山です。
今回は、MIT(マサチューセッツ工科大学)が進める教育ビジネスのイノベーションについて書きます。私自身も過去に何個かMIT Sloanビジネススクールの講座で世界から参加する学生たちと一緒に学ぶ機会があり、その中で感じたMITの教育のイノベーションに対する取り組みにすごいな!と感動することがたくさんありました。
よくよく調べていくと、MITがやろうとしていることの本質は、教育マーケットにおけるオープンイノベーションであるこがわかってきました。私個人の見解も含めた読み物的な記事にはなりますが、読者の方のイノベーションやビジネスについての知見の肥やしとなれば幸いです。
MIT Sloan ビジネススクール
まずMITについて。MITは、ケンブリッジ大学、オックスフォード大学、ハーバード大学、スタンフォード大学と並ぶ世界トップ5の大学として知られる大学です。
大きく分けると「工学」「人文科学・社会科学」「理学」「経営学」「建築学・都市計画」という5つの学部に分かれており、合格率は8%前後、学費も年間500万円ほどかかるとされており、日本から気軽に参加しようとしてもなかなか難しい大学です。
MIT Sloan( https://exec.mit.edu/s/ )は、そんなMITが提供する社会人向けのビジネススクールです。私が受けた講座はMIT Sloanであり、以降の内容はMIT Sloanについての考察となります。
MIT Sloanのミッションは
「The mission of the MIT Sloan School of Management is to develop principled, innovative leaders who improve the world and to generate ideas that advance management practice.
(世界を変えることができる信念を持った革新的なリーダーを排出し、経営的実践を進化させるアイデアを生み出すこと)」
このミッションを達成するために、一般的なビジネススクールの目玉コンテンツであるMBAコースを主軸に、オンラインで世界中の人が教育を受けることができるようにExecutive Educationを提供しています。
Executive Educationでは、
「Business Analytics」
「Digital Business & IT」
「Entrepreneurship」
「Family Enterprise」
「Financial Management」
「Global Economics and Market」
「Marketing」
「Negotiation of communication」
「Operations」
「Organization & Leadership」
「Strategy & Innovation」
「Systems Thinking」
の12のトピックで、94のコースを提供されています。
1ヶ月のプログラムから半年に及ぶプログラムまでさまざまなオプションが用意されていますが、「アクティブラーニング」を標榜するMIT Sloanにおいては、座学ではなく生徒自身が学ぶ姿勢を助長するプログラムが全面的に取り入れられています。
アクティブラーニングによる本質的な学びの場の提供
私自身は過去に2つのプログラムを修得しましたが、いずれも「EMERITUS(https://emeritus.org/)」というオンライン教育プラットフォームを提供するスタートアップと協業して講座を提供していました。
学びのスタイルとしては、「ビデオラーニング → オンラインディスカッション → グループワーク and/or 個人エッセイ」というフレームワークを確立されており、生徒が同窓生との対話を通じて自ら学んでいくアクティブラーニングの仕組みが取り入れられています。
ちなみにアクティブラーニングとは、MITやスタンフォードをはじめとして、世界の教育の現場で採用されている学習方法のメソッドの一つです。座学ではなく生徒自らが自発的に学ぶ環境を提供することで、学びの効果を最大限に引き上げるという考え方です。
講義や読書による学習定着率が5~10%であるのに対して、グループ討論、自ら体験する、他の人に教えること=アクティブラーニングを通じた学習定着率は50%以上になるということが研究で証明されています。
「何を学ぶかよりも、どうやって学ぶか」が学びの成果を最大化させるために必要な考え方であり、最先端の教育の現場では取り入れられています。
ちなみに皆さんはミネルバ大学という大学を聞いたことがありますでしょうか?
ミネルバ大学は、ハーバードをはじめとした4つのリベラル系大学の学長たちが発足した大学で、超最先端の教育思想をカリキュラムに取り入れた、キャンパスを持たない大学で名を馳せています。ちなみに、2014年の設立からわずか数年で、スタンフォードやMITよりも入学が難しい世界最難関の大学になりました。
このミネルバ大学では、90分の講義の中で講師が喋れるのは10分だけ!と決められています。講師が喋りすぎると学修定着率を落とすからです。アクティブラーニングを究極的に実践してます。
CRMシステムによる世界中の見込み客を追いかける仕組み
MIT Sloanの教育ビジネスが本気であることを示すもう一つのエピソードがあります。それは、CRMシステムを取り入れて見込み客を徹底的に追いかけるという姿勢です。
ウェブで資料請求をするとボストンから国際電話がかかってきます。何回も、何回も。
「資料ダウンロードしてくれてありがとう!困ったことはない?メールでも一報入れておくから、わからないことがあれば気軽にメッセしてね♪」という簡単なフォローアップの電話ですが、日本時間のお昼休み〜午後を狙って、電話を取るまで毎日かけ続けるという追いかけっぷりは、感嘆させられました。
ちなみにですが、ロンドン・ビジネススクールもMIT Sloanと同じ「EMERITUS」というオンライン教育プラットフォームと協業してます。両ビジネススクールに資料請求したところ、「@emeritus.org」のメールアドレスから「申し込みありがとう!」とフォローアップのメールが届きました。 ウィークポイントである集客は、外部パートナーにまかせてしまえという発想です。
収益を生み出す教育ビジネス
本気で教育ビジネスに挑むMIT Sloanが果たしてどのくらい稼いでいるのか?気になりませんでしょうか。
皮算用にはなりますが、生徒数と学費から換算すると1コースあたり数千万円〜1億円以上の売り上げがあることがわかります。さらにこれが94コースも同時並行で走っています。
主力のMBAプログラムも授業料は
企業データベースのGrowjoによると、MIT Sloanの年間売り上げは$500M(500億円)らしいです。 MIT本体が$3B(3000億円)なので、合わせて3500億円ほどの規模になります。
慶応大学・早稲田大学はそれぞれ1500億円ほどの売り上げということなので、その2倍以上ということになります。
MITの教育ビジネスはものすごい収益を生み出してますね。
まとめ
少し徒然な文章になってしまいましたが、MIT Sloanが本気で進める教育ビジネスについていかがでしたでしょうか?
MIT Sloanが自身の掲げるミッションを達成するために、いかに全力で取り組んでいるかがわかります。彼らのやっていることは、ITテクノロジーや最新のマーケティング手法を取り入れた教育におけるDXです。また足りないリソースは外部パートナーとの連携で補えばいいというのは、オープンイノベーションの王道的な一手ですね。さすがMBAを教えるビジネススクールだけのことはあるなと思いました。
袖山晋(Shin Sodeyama)
株式会社ベルテクス・パートナーズ
イノベーションソリューション事業部
デザインシンキング歴15年以上。クリエイティブファームにてブランディングや新事業開発支援の経験を経のち、ものづくりベンチャーを起業し、プロダクトの大英博物館永久収蔵を実現。その後、楽天ヘッドクオーターにて佐藤可士和氏の下、グループ全体のサービス開発支援、UX・ブランド統一プロジェクト推進。ベルテクスパートナーズでは、デザインシンキングを中核にビジネス、テック、クリエイティブの多角的なアプローチでイノベーション創出支援を推進。
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