行動ベースから次の次元に進むマーケティング、感情認識の先進AIソリューション

認識対象が行動から感情へと進化するAIソリューション

 

  2017年はAI活用を本格的に進める企業が増加し、世界で数多くの新技術が開発されている。その中でも本稿では感情認識でのAI活用について注目し、実際に取り入れた海外企業の事例を紹介していきたい。

 

 

1.感情認識AIを提供する米Affectiva
 

 Affectiva社は元々MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究プロジェクトから発足し、2009年にMIT発のスタートアップとして事業を開始している。現在はアメリカ合衆国マサチューセッツ州に本部を置いており、創業者Rana el Kalioubyは、雑誌WIREDが選ぶ「未来を作る25人の天才」にも選ばれている。

 

 Affectiva社が開発するのは、人間の感情を正確に読み取る感情認識AIを開発/提供しており、アルゴリズムの開発にあたり、75か国で600万人を超えるヒトの表情/感情に関する画像データを集めて実装している。

 

 Affectiva社の感情認識AIではウェブカメラなどから集めた表情の画像データから口角や眉毛などのパーツ、顔に浮かぶ皺などの細かな動き/特徴を解析することで、きめ細かく感情判定を実現している

 

 Affectiva社の感情認識AIをベースにした主要なプロダクトとして、2018年3月現在は5つのサービスを提供している

 

  Emotion SDK and API – Face

顔の画像データ活用による感情認識AIを自社システムに導入するSDK/API提供

 

  Affdex for Market Research

Webカメラを活用してコンテンツ/広告に対するユーザーの感情の変化を測定するソリューション

 

  Emotion as a Service

ヒトの表情が写る動画/画像データを送信すると感情の分析/評価を行うSaaSソリューション

 

  In Lab Biometric Solution

感情認識AIとアイトラッキングデバイスなどを組み合わせてヒトの行動と感情の関係を解析するソリューション

 

  Emotion API - Speech

声などの音声データから感情を分析/評価を行うソリューション(現在はクローズドでβ版を提供)

 

 日本国内ではSIベンダーのCAC社が日本の正規代理店としてAffectiva社の感情認識AIを活用したソリューションを提供しており、これまでの活用実績としては凸版印刷と同社が連携して、2017年6月の東京都議会議員選挙PRイベントなどがある。

 

 「笑顔でつくる東京」をコンセプトにしたPRイベントで、Affectiva社の 感情認識AIによる参加者の表情を検知結果を「笑顔投票数」として活用する「笑顔投票所」などの取り組みを実施している。

 

 

2.感情認識AIで動画広告を予測する

 

 フランスに拠点を置き、グローバルで27の拠点を持つ動画広告マーケットプレイスを提供するTeadsでは大手出版社の広告枠のマネタイズのサポートや、広告主のビデオ広告制作のアドバイスなども行っている。

 

 広告効果の高い動画広告の傾向を把握するべく、視聴者の感情に強く訴えかけ、瞬時に拡散されやすいコンテンツの調査をAffectivaに依頼した。

 

 依頼に基づき、Affectivaでは、YouTube上で動画広告が流れる前に、ポップアップでPCのウェブカメラを起動させて広告を見ている表情を撮影することに関する許諾を求めるメッセージ表示し、実験の参加者を募るキャンペーンを実施した。

 

 それにより2,600名超ののキャンペーンの参加者を集めることに成功し、YouTube上で展開する40の動画広告を表示してユーザーの感情の変化をAffectivaの感情認識AIで分析を行った。

 

 その結果、視聴者の感情に大きな変化が起こすことができた広告は、SNSでのシェアされる率が上がるということが具体的な数字で明らかになり、通常の広告動画と比較して、以下のような傾向があることがわかった。

 

・感情を刺激する広告は、感情への刺激が少ない広告に比べて4倍以上シェアされる

・笑顔を促す広告が視聴回数1,000万回に到達する確率は約5倍

・続編映画の予告動画は通常の映画の予告動画に比べて評価や共有などの反応率が17%低い

etc…

 

 Affectivaのリサーチソリューションで分析を行った結果、Affdex社の定義する感情スコア、Affdexエモーショナルエンゲージメントスコアに基づいて、バスが起きやすい(話題になりやすい)具体的な動画広告の条件が明確になり、拡散される可能性の高い動画広告を事前に予測できるようになった。

 

 それらの成果を基に”Evian's Baby & Me”のようにコミカルでユーザー経験を重視する広告作りができ、数千万回の視聴回数を得てシェアされやすい動画広告製作ができたのだ。

 

 また動画広告の評価方法に変化を起こした点も注目すべきだ。従来は動画視聴数、視聴時間、視聴完了率などが主な指標となっていたがAffectiva社の感情認識AIは、行動に基づく指標での評価だけではなく、ユーザーの感情変化という新しい指標を加えることを実現している。


 

3.小売店頭で感情に合わせたパーソナライズキャンペーンの実現

  

 米国サンディエゴに拠点を置く小売業者の店舗内のデジタルサイネージから店舗内ディスプレイへの広告配信/マーケティングソリューションのshelfPointを展開するcloverleaf社もAffeciva社の感情認識AIを活用して大きな成果を上げている。

 

 同社の店舗内の商品棚全体に取り付けられたディスプレイにユーザーごとにパーソナライズした販促広告を配信するソリューションshelfPointにAffectiva社の感情認識AIを導入している。

 

 shelfPointは商品棚に搭載されたセンサーにより、顧客の年齢・性別・人種などを識別し、それらのデータを基にユーザーの属性に合わせてパーソナライズされた商品や割引などの販促キャンペーン、個別メッセージを商品棚全面に設置された液晶ディスプレイに写しだすのだ。

 

 shelfPointにAffectiva社の感情認識AIを組み込むことで、センサーを通して得た顧客の属性情報に加えて、来店客が商品を選んでいる際の感情まで解析し、顧客の属性や店内行動だけではなく、商品や棚に接触した時の感情なども合わせて解析した上で、ディスプレイ上にキャンペーンをカスタマイズして提示することができるようになっている。

 

 顧客の年齢や性別、感情に合わせてパーソナライズされたキャンペーン情報をディスプレイに写しだせるようになった結果、導入店舗の売上向上に貢献するとともに、衝動買いの誘引率は感情認識AI活用前から40%も増加した事例も出ている。

 

 

4.行動ベースのマーケティングから感情ベースを含めた次の次元へ

 

 行動ベースでのパーソナライズはオンラインでは当然のように実施され、ソリューションも様々登場しており、オフラインの実店舗でも、今後AIと店内ディスプレイを連動させたパーソナライズされた販促キャンペーン情報提供するようなサイネージなどの登場も見込まれる。

 

 Affectivaのような感情認識AIは、これらオンライン/オフラインの行動ベースのパーソナライズをもう一歩推し進めて、プロモーション/商品/サービスに対する行動の理由となる感情や、行動を起こす前の感情を踏まえて、ユーザー/生活者と接点を持った瞬間の行動に現れる前の真のニーズに合わせたマーケティング施策を実現するソリューションとなるだろう。

 

 マーケティングを仕掛ける側も、ユーザー自身すらも気付く前のニーズにアプローチする。AI活用によるマーケティングは行動ベースの次の次元に進み始めており、その有効な活用方法をいち早く見つけることができた企業は大きな果実を得ることができるのではないだろうか。  

 

 

 

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

AI/INNOVATION SOLUTIONチーム

 

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種でのAIプロジェクトの推進支援や新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業におけるAIプロジェクトを推進や、新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

 

監修者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

執行役員パートナー 東條 貴志

 

スタートアップでの新規事業立ち上げや事業責任者などの経験と、アーサーアンダーセン、ローランド・ベルガーなど複数ファームでの10数年のキャリアに基づく先端領域における大手企業の新規事業・イノベーション創出支援やAI/機械学習を活用した事業創出/業務改革に多数の経験を有す。

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