サービスのイノベーションを追求する英ファッションEC「ASOS」の事例

既存サービス強化を最速化する手段としてのオープンイノベーション活用

 

  アクセラレータプログラムを開催する企業の狙いは、必ずしも新規事業の創出というわけではない。今回は、英国でファッションECを手掛けるASOSを取り上げ、既存サービスの改善や強化を最速で実現し続けるための手段として、アクセラレータプログラムによるオープンイノベーションを活用する事例を紹介する。

 

 

1.ASOSの自社サービス強化を目的とするアクセラレータプログラム 

 

 ASOSは2000年に創業したイギリスのファッションECサイトで、今や売上高は14億ポンドを超え、ロンドン株式市場に上場する大手企業である。

 

 ASOSのECサイトは全世界20か国以上で展開し、1,200万人以上の顧客を持つ。現在の取り扱い商品数は自社ブランドも含め85,000点以上、毎週約4,000もの新商品が追加され、サイトの訪問者数も一日当り平均360万人という巨大サービスだ。

 

 本プログラムは、スペインに本社を置く通信事業者Telefonica傘下のシードアクセラレータ―であるWayraUKと共同で運営される。

 

 プログラム期間は8か月で、選ばれたスタートアップはロンドン中心部にあるWayraUKのオフィススペースを利用できる他、ASOSやTelefonicaのグローバルネットワークや顧客基盤を利用することができる。

 

 

2.対象は先端テクノロジーを活用したサービス確立済の成熟スタートアップ

 

 本プログラム最大の特徴は、その目的を新規事業創出ではなく、既存サービスの強化を明確に掲げている点だ。

 

 元々ASOSはインターネットサービス黎明期の創業当時からオンラインでの販売に特化し、欧州(特に英国)ではファッションECの最先端を走るイメージを構築してきた。

 

 しかし、ASOSのCIOであるCliff Cohenは、ファッション業界を取り巻く変化の速さについて危機感を持ち、ファッションEC最大手となった現状でもテクノロジーとトレンドについて最先端である必要性を説いている。

“Fashion evolves incredibly quickly, as does technology, and we need to be ahead of trends in both sectors in order to best serve our customers and partners. ”

出所:WayraUK

 

 サービスをテクノロジー面でも最先端とし続けるためにASOSが選択したのが、スタートアップとの協業によるオープンイノベーションだ。

 

 プログラムの対象は、シードステージではなく、既に最新のテクノロジーを活用したサービスを確立済みで即座にASOSのサービスに反映することが期待できるスタートアップに限られる。

 

 2016年12月、この条件を満たした3社のスタートアップが選定された。ファッションECというASOSのサービスをテクノロジー面で補完し、イノベーションを生み出すことが期待されている3社の概要を順に見て行こう。 "

 

action.aiAIを活用した顧客対応チャットボットを手掛ける

action.aiは、Smart Chatbotというサービスを通して、カスタマーサポートの進化を手助けする。AIを活用した彼らのチャットボットは対話式のインターフェースに強みを持っており、例えばASOSのサイトにある大量の商品の中から、チャットボットを通して顧客が欲しい商品へスムーズに案内し、離脱を防ぐなどのサービス向上が期待される。

 

Wishroundギフト用のクラウドファンディングサービス

Wishroundは、ECにおけるグループ購買プラットフォームである。誕生日や結婚、出産、パーティーなど複数人でプレゼントを渡す場面において、Wishround上でギフトの概要設定~仲間への告知~集金~購入までができる仕組みだ。これをASOSに連携させることにより、高価な商品の共同購入など、新たなショッピングシーンが喚起できると考えられる。

 

XpresoECに適した柔軟な配送管理システム

Xpreso は、ECに特化した配送管理システムだ。ユーザーはモバイルアプリを通して、配送ドライバーとのメッセージのやり取りや、配送場所の変更、詳細な到着予定時間の確認などが可能。

これにより、スムーズな商品の受け取りによる顧客体験の向上が期待できる。ASOS側にとっても、再配達率の軽減などロジステック業務を効率化することが可能だ。

 

 

3.最先端のサービスを提供し続けるためのオープンイノベーション

 

 ファッションECの世界では、最先端のトレンドへの対応が他社との差別化を図る上で極めて重要な要素となっている。

 

 これまでもASOSは顧客体験向上やビジネスプロセスの改善に積極的に取り組んできたが、ファッション・テクノロジー両面で変化のスピードに先んじるためには、自前でのサービス強化だけではなく、オープンイノベーションで外部も活用したイノベーションの加速が必要になりつつあるということだろう。

 

 オープンイノベーションの取り組みとして、いきなり既存事業を飛び越えて、新規事業を創出するという所まで踏み込むと大きく取り組みをぶち上げたものの、何ら成果が出ることがなく終わることも往々にしてよくある。

 

 まずは既存の事業をベースにサービスレベルでのイノベーション創出に向けたスタートアップとの連携を行い、競合との差別化/優位性構築を可能にする先端サービスの継続的な構築を目指すというのもオープンイノベーションの有効な取り組みのオプションとなるだろう。

 

 

 

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

INNOVATION SOLUTIONチーム

 

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種での新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業における新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

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