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仏郵政公社La Posteの協業機会を広げる随時応募型のイノベーションプログラム事例


仏郵政公社La Posteのアクセラレータープログラム「Start’inPost」の事例

 フランスの郵便事業を運営するフランス郵政公社La Posteがアクセラレータープログラム「Start’inPost」でイノベーション創出を目指している。

 プログラムの応募サイトはフランス語だけでなく英語のページも充実させ、国内外から幅広くスタートアップの応募を受け付けており、La Posteのオープンイノベーションへの積極的な姿勢が垣間見ることができる。

1.イノベーション創出に積極的なフランス郵政公社La Poste

 フランス郵政公社は歴史が古く、郵政電信省傘下の郵便/電信事業を手掛ける1879年に設立された政府傘下の組織「Postes, télégraphes et téléphones(PTT)」を前身とし、PTTの再編に伴い、1991年に商工業的公施設法人(Établissement public à caractère industriel et commercial/通称 EPIC))として独立し運営されている。

 La Posteはフランス本土に加えて、5つのフランス海外県/海外領で郵便事業を行っており、従業員数は25万人近くを数える大規模な事業体となっている。

 La posteは2013年にドローンを活用した新聞配達のテスト運用を行うなど、時代に先駆けたイノベーションの導入に積極的な所が特徴的だ。

2.スタートアップの応募を常時受け付けるプログラム「Start’inPost」

 La Posteのアクセラレータープログラム「Start’inPost」は2014年に開始されたプログラムで、通常の多くの企業が運営するアクセラレータープログラムと異なり、応募期間を限定せず常時応募を受け付けている。

 ただし、応募するスタートアップは、すでにユーザー向けにサービス/プロダクトの提供を行っており、販売実績もある状態とであることが条件になっている。

 プログラムは2つのフェーズで構成されており、応募後に選考に通過したスタートアップは3か月間のテストフェーズを経て、9か月間の本格的なアクセラレーションフェーズに入る。

 テストフェーズにおいて、スタートアップはLa Posteの顧客ネットワークを活用して、プロダクトの試用試験を行うことができる。

 テストフェーズ中に顧客から良い反応を得ることができた場合に、次のフェーズの9か月間に渡るアクセラレーションフェーズに移る。

 アクセラレーションフェーズには、スタートアップはLa PosteとLa Posteのパートナー企業のメンターからメンタリングを受けることができる。

 また、スタートアップはLa Posteが保有する1万以上の顧客企業リストを活用して営業アプローチができるなどLa Posteに蓄積している顧客データを活用したマーケティング、営業を行い、本格的な事業拡大を目指していくことができる。

3.アクセラレータープログラム「Start’inPost」で実現した協業事例

 La Posteとスタートアップの協業事例。 これまでのプログラムの中で様々な協業がなされているが、その中から3つの事例を紹介していきたい

shippeoは荷主と配送会社との情報共有を行い、配送フローを円滑に進めることができるツールを開発している。プログラムを通じ、すでに6社の配送会社がツールを利用している。

Heuritechはディープラーニングを活用したファッション、美容関連のコンテンツ検出ツール。例えば、ファッションブランド企業がインターネット上の自社の服を着た有名人の画像を画像認識技術で検出したりコンテンツの検出が可能。プログラム期間中に収益が16倍伸びる結果となっている。

KoolicarはCtoCのみならずBtoBでカーシェアリングサービスを展開している。プグラム期間中に保険会社MAIFや自動車プジョーで有名なプジョー株式会社から2,000万ユーロを調達している。

4.常時受け付けによるアクセラレータープログラムのあり方

 従来のアクセラレータープログラムが応募と終了の日時を設けて明確に期限を区切るのが主流な中で、La Posteは期限を区切らずに常時応募を受け付けるスタイルを貫いている。

 プログラムでは3か月のテスト期間でスタートアップを見極め、9カ月のアクセラレーション期間でスタートアップを育成支援する、2段階1年間の長期間の支援を行う。

 従来の期間を決めたアクセラレータープログラムの場合、期間が定められている分、参加スタートアップも支援する企業側も、プログラム期間中に集中して効率的に協業/事業拡大に取り組めるというメリットがある。

 しかし、募集期間内に応募されたスタートアップのみが対象となるため、その期間中に応募できない有望スタートアップとの協業可能性を取りこぼしてしまうというデメリットもあった。

 La Posteのように期間を定めないアクセラレータープログラムは、運営/支援する企業側の負担は大きくなるものの、有望スタートアップがプログラムに参加できるタイミングで応募できるので、有望スタートアップの取りこぼしなく、協業を推進できるという点が従来のプログラムにない大きなメリットになっている。

 新規事業創出/イノベーション創出を目指す際には、プログラムの期間を限定した効率性を重視したプログラムだけではなく、効率性は落ちるものの、期間を定めないことによる機会損失を最小化するプログラムも選択肢として考えることで、目的に合わせたプログラム設計による自社にとって最適な協業機会創出が実現できるのではないだろうか。

 

執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

INNOVATION SOLUTIONチーム

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種での新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業における新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

 
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