物流業界で進むコンソーシアムで実現する新しいオープンイノベーションの形

物流業界に見る複数企業コンソーシアム型オープンイノベーション

 

 物流業界で新しい形態のアクセラレータプログラムによるオープンイノベーションの推進事例が進行している。従来の単一企業が主催する形ではなく、物流業界全体の幅広いバリューチェーンの中で関連する領域の複数企業がコーポレートパートナーとして共同でアクセラレータプログラムの運営を行い、物流という大きな産業テーマに対して多面的なメンタリングを行う体制を構築している。

 

 本プログラムの狙いや期待される成果などについて、詳しく見ていこう。

 

 

1.Logistics Tech Acceleratorが輸送・貿易・倉庫を主要テーマに展開中

 

 Logistics Tech Acceleratorは欧州で2016年6月に第1期がキックオフし、8社のスタートアップが参加した。続いて第2期が2017年1月下旬にキックオフ予定だ。

 

 当プログラムは、スマートテクノロジーで物流業界を「破壊する」という刺激的な目標を掲げている。

 

 主要テーマとして、Smart Warehouse(倉庫の在庫管理などにおける、IIOTや仮想化技術を使ったクラウドソリューション、ドローンの活用など)、Smart Transport(貨物輸送における、自律走行車やテレマティクスの活用など)、Smart Trade(貿易における、ブロックチェーン技術や仮想通貨の活用など)が挙げられている。

 

 プログラムは4~5週間のバーチャルカリキュラムの受講から始まり、その後スタートアップとコーポレートパートナーが特定のテーマで協業し、パイロットプロジェクトを行う。

 

 当プログラムから生まれたイノベーションを最速でビジネスとして実現させるため、参加スタートアップ側にも条件が課されている。

 

 それは、少なくともシード段階の資金調達を済ませていること、プロダクトの準備ができていることだ。その代わり、エクイティの一部を差し出すという、従来のアクセラレータプログラム定番の要件は求められていない。

 

 この条件からも、物流という産業全体をターゲットとし、事業としてある程度の評価を得ているスタートアップを参加させることでトップスピードでイノベーションを具現化させるという当プログラムの本気度が見て取れるだろう。

 

 

2.ルフトハンザなど多様な企業がパートナーとして続々と参画

 

 上述の通り、Logistics Tech Acceleratorプログラム最大の特徴は、物流という産業に携わる複数の企業がコーポレートパートナーとして参画していることだ。

 

 第1期にはKaleido、Lufthansa Cargo、Ingram Microの3社が参画。第2期には新たにMAN Truck、Fiergeの2社が加わっている。

 

 参画パートナー各社の事業内容は以下の通りである。

 

 Kaleido

スペインに拠点を置き、風力発電装置や産業機材など大型貨物の海運輸送を手掛ける。当プログラムの創設企業である。

 

 Lufthansa Cargo

イツのナショナルフラッグキャリアであるルフトハンザ航空の貨物輸送部門。

 

 Ingram Micro

45か国に拠点を持つアメリカの大手ITサプライチェーンプロバイダ。クラウド活用に強みを持つ。

 

MAN Truck

ドイツに本社を置く、トラックやバスなどの商業車両メーカー。新たにクラウドベースの物流システムプラットフォームRIOを手掛ける。

 

Fierge

ドイツに本社を置き、欧州・極東を中心に世界15ケ国に倉庫を持つロジスティックグループ。

 

 

3.コンソーシアムで物流業界のイノベーションテーマに幅広く対応可能に

 

 物流という産業は、陸・海・空の輸送、倉庫管理、サプライチェーン構築と広範な領域に渡る分野で構成されている。

 

 そのため、当プログラムには、物流に関連する幅広い事業領域をカバーするパートナー企業がコンソーシアムを組んで参画し、それぞれの領域での強みを生かしたメンタリングを行う。

 

 例えば、Lufthansa Cargoは顧客向けサービスeServicesを通して、輸送予約やトラッキングのオンライン化や、輸送書類のペーパーレス化などを実現してきた。

 そのノウハウを生かし、物流サプライチェーンにおけるデジタル化などの観点で、スタートアップへのメンタリングを行うことが可能だ。

 

 このように、複数のパートナーが様々な視点からメンタリングを行うことで、物流業界のイノベーションテーマに幅広く対応することが可能となり、プロダクト開発とリリースの実現性が高まることが期待できる。

 

 また、参画パートナーが複数存在することで、スタートアップは広範な領域に渡る物流業界において多様な協業機会を得ることができ、物流業界全体のバリューチェーンの中でビジネスを具現化できる可能性が高まる。

 

 新たに参画したMAN Truckは自らが手掛けるRIO(クラウドベースの物流システムプラットフォーム)を「オープンプラットフォーム」であると公言しており、スタートアップとの協業でRIOに様々な機能を実装させていく展開も十分に考えられる。

 

 このように、当プログラムの事例のように複数のコーポレートパートナーが参画することにより、メンタリングと協業機会が幅広く提供され、物流業界全体での同時多発的なイノベーションが実現することが期待される。

 

 物流業界に限らずサービス/製品・商品が提供されるまでのバリューチェーンが広範な領域に渡り、1社でカバーできる範囲が限られているような業界において、幅広い領域からスタートアップ企業を募ってオープンイノベーションを進めるのは困難な場合もある。

 

 イノベーション創出の機会を広げるために対象業界での補完関係を築ける企業がコンソーシアムを作ってアクセラレータプログラムを行うというのも、今後のオープンイノベーション創出の取り組みの新しいオプションとなっていくことが想定される。 


 

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

INNOVATION SOLUTIONチーム

 

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種での新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業における新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

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