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未来からの逆算でイノベーションのアイデアを生み出すホームセンター大手Lowe’sの事例


SFに着想を得た「未来からの逆算」でイノベーションのアイデアを生み出す

  米ホームセンター大手Lowe’sは、Lowe’s Innovation Labsを通じて数々の斬新なイノベーションのアイデアを事業化してきた。

 VRでのインテリア体験、宇宙ステーションでの3Dプリンターサービス、ロボットによる店舗案内に至るまでテーマは様々である。

 競合他社が目を向けない領域への相次ぐ参入の秘訣は、SFにヒントを得た「未来からの逆算」を行う手法にあった。

 Lowe’s Innovation Labsのイノベーション創出プロセスの全容に迫る。

1.予想外を生み出す震源地「Lowe’s Innovation Labs」

  住宅リフォーム・生活家電チェーンを手がけるLowe’sは、アメリカとカナダで、1,600程度の店舗を展開し、毎週1,400万人程度が訪れる大手チェーンだ。

 1921年に創業し、今やホーム・デポに続いて2番目に大きなハードウェア・チェーンとなっており、Fortune100のリストに名前を連ねている。

 そんなLowe’sが目指しているのが、他の小売事業者が目を向けないようなイノベーション創出の取り組みだ。

 競合他社が、Eコマースやデジタル関連のプロジェクトに注力する中、Lowe’sは自社が開発するとは思われていないものこそを開発するというイノベーション創出のアイデアにこだわりを持っている。

 Lowe’s Innovation Labsのエグゼクティブ・ディレクター、Kyle Nelは 「人々が予期しないものこそを創りだす」というこだわりを語っている。

”build stuff you wouldn’t expect us to build with people and partners you wouldn’t expect us to build with. ”

出所:CHAIN STORE AGE

Lowe’sのイノベーションを生み出すアイデアにこだわるDNAは、いかにして実現されているのか?Lowe’s流イノベーション創出の代名詞である Lowe’s Innovation Labsの取り組みを見ていこう。

2.なぜイノベーティブな着想を得られるのか?

 Lowe’sが絶えずイノベーティブな会社であり続けるために、Lowe’s Innovation Labs が設立されたのは2014年。 以来、他企業のイノベーションラボとは一線を画す組織として注目を浴びてきた。

 その領域は、Lowe’sの既存の事業領域にとらわれない。AR/VR、ロボティクスからオンデマンドマニュファクチャリング、粒子加速器に至るまで、実に幅広い。 Lowe’s Innovation Labsが斬新であるのは、そのイノベーションを生み出すアイデアの創出プロセスが、従来のビジネスとは異なるアプローチによって行われているためだ。

 Lowe’s Innovation Labsが新たなサービス/事業を考える際にまず行うのが、「未来からの逆算」だ。

 数十年後の世界がどのような世界であるかを考え、そこから遡って現在必要とされるイノベーションのアイデアを創出するというアプローチを取っている。

 この方法によって、他社が取り組まないユニークなイノベーションのアイデアを推進してきているのだ。

3.マンガでロードマップを描く「SFプロトタイピング」

 「未来からの逆算」をするために、Lowe’s Innovation Labsが活用しているのが、マンガを使った経営陣を含めた共通認識作りだ。

 従来、新規事業のビジョンを示すために使われてきたパワーポイントによる説明資料ではなく、SF形式のマンガによって未来像のストーリーを共有する。

 マンガでは、専門用語を極力使わず、分かりやすい表現で、未来に何が起こるのかを、経営陣と共に理解することを目指している。

 SF作家と協働してテクノロジーや生活者の未来像を描き、具体的な未来の生活者の行動、課題、解決策を表現し、経営陣含めてそこで提示された未来のイメージに共感を持った上で事業化へ動き出す事ができるのだ。

 Lowe’s Innovation Labsは、一度に全てを作り込もうとしない。それよりもまず未来を理解し、未来についてのストーリーを創りだす事こそがイノベーションのアイデアを創出する第一歩だと考えているのだ。

4.ラボが生んだ「VRでのインテリア体験」

  Lowe’s Innovation Labsからどのようなプロジェクトが生まれているのかを具体的に見ていこう。

 VRで思いのままに部屋のデザインを描き、共有することができたら?そんな未来を実現させたのが、家主向けに3Dで家のリノベーション後の内装を描き出し、直感的に共有するツール「Holoroom」プロジェクトだ。

 従来の設計図では共有できなかった具体的なデザインやイメージを、Holoroomを使う事で共有することができるようになった。

 Holoroomは2014年にコンセプトが初めて紹介され、トロントで6ヶ月に渡ってプロトタイプが行われた。

 その後、顧客からのフィードバックを活かした改善を経て、2015年にはアメリカの19のストアで実施が行われている。

 Holoroomの「VRで部屋のデザインを共有する」という一見突飛なアイデアは、現状の設計ツールやビジネスありきでは、なかなか生まれなかった着想だと言える。

 そして、その着想をすぐに実施に移すのが、Lowe’s Innovation Labsのやり方だ。

 それによって、中長期で競争力を持てるテクノロジーを、パートナー向けに素早く提供する事ができるのだ。

5.「未来からの逆算」が、イノベーションのアイデアを生み出す

 多くの小売り企業は、現在のビジネスの延長で新たな取り組みを検討してしまい、すぐに利益貢献が見込めないということで、分かり易く明白なトレンドに乗ったもの以外、新しい取り組みがなかなか実現されない事が多い。

 Lowe’s Innovation Labsは、「未来からの逆算」によって新たな着想を得ることで、「人々が予期しないものこそを創りだす」というLowe’sのビジョンに基づき、未来に必要とされているモノなら現在から見て突飛な取り組みに感じられるものでも積極果敢に実現させている。

 特に新規事業/イノベーション創出の検討を行う際には、本当にこれが事業/サービスとして成立するのかと悩むような場面に出会うことも多い。

 そんなときに経営陣含めた未来に対する共通認識を持った上で「未来からの逆算」で必要性を判断するというのは「マーケット分析による現状の延長」から脱却して意思決定の質を高める手法としても非常に有効なものになるだろう。

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

INNOVATION SOLUTIONチーム

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種での新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業における新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

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