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イノベーションセンターで研究開発とサービス開発を加速するメルクの事例


イノベーションセンターでアクセラレータープログラム多地域展開するメルク

 自社でアクセラレータープログラムをグローバル展開する場合、プログラムの効率的な運用と、地域性への対応をどのように両立させるべきか。

 医薬・化学品メーカーのメルクが、ドイツとケニアで開催しているアクセラレータープログラムの事例を見てみよう。

 ドイツの医薬・化学品メーカー、メルクがイノベーションセンターを開設"17世紀からの歴史を持つドイツの老舗医薬・化学品メーカーであるメルクが、本社を置くドイツのダルムシュタットに、2015年5月、新たにイノベーションセンターを開設した。

 イノベーションセンターの床面積は4,000㎡を超え、2棟に分けられた施設のうち、片方は常に従業員やビジターに開放されており、もう片方は主にイノベーションの事業化を目指すプロジェクトチームが利用する。

 メルクは新たに設立したイノベーションセンターをグループ全体のグローバルなイノベーション拠点と位置付け、社内外から広くアイディアを集める施設として活用することを目指している。

 イノベーションセンター内で実施されるプロジェクトは、社内スタートアップとして、一定期間をセンターの中で事業化までに必要となる様々なサポートを受けながら、事業の立ち上げ/拡大を模索する。

 イノベーションセンターの行うサポートは、ワークショップや講義などの研修、市場分析、社内外の人的ネットワークを活用した連携先/取引先の紹介、グループ内の各分野の専門家によるメンタリングなど多岐に渡っている。

1.センター主導でアクセラレータープログラムを国内外2か所で同時開催

 メルクはイノベーションセンター主導で2016年からアクセラレータープログラムを開催している。開催場所はイノベーションセンターのあるダルムシュタットと、ケニアのナイロビで、プログラム実施期間は3か月。

 両プログラム共に選定されたスタートアップへの出資は前提とせずに資金提供を行う。既に2016年春・秋に2回実施されており、次回は2017年3月~5月に開催予定だ。

2.独ダルムシュタットの先端分野を対象としたアクセラレータープログラム

 メルクの本拠地、ドイツ・ダルムシュタットで開催されるアクセラレータープログラムでは、メルクの主力事業分野における先端分野での協業可能なスタートアップを模索している。

 スタートアップへの資金提供額は最大5万ユーロで、The Merck Innovator Academyによるカリキュラムや、メルクのイノベーションセンターでの社内外コミュニティなども提供される。

 具体的な対象領域として下記の3つのテーマでスタートアップの募集を行っている。 ・

Healthcare

処方薬やOTC医薬品分野のアレルギー・バイオ医薬品やその後続品などでのソリューション

Life Science

ライフサイエンスにおいて、研究や製造をより効率的にするためのイノベーティブなツール

Performance Materials

液晶やエフェクトピグメントなど高機能素材に関するビジネス

2016年秋のプログラムでは、以下のスタートアップが選ばれている。・

クリニックでの診断や医薬品の研究開発を効率化するデジタルプラットフォーム

ラボ設備などのシェアを進める科学者向けマーケットプレイス

ラボのワークフローをより効率化するサービス

食品や医薬品の現在の状態が分かるスマートパッケージ

 とくにR&D関連のサービスやソリューションを扱うスタートアップが選ばれており、ドイツにおける先端領域での研究開発を加速させることを目指していることが見受けられる

3.ナイロビではデジタルヘルスケアでアクセラレータープログラムを実施

 「シリコン・サバンナ」を掲げるケニアでは、Digital Healthcareがテーマとされ、スタートアップへの資金提供額は最大3万ユーロで、参加スタートアップはナイロビで宿泊施設とオフィススペースの提供を受けることができる。

 また、メンタリングにはメルクのマネジメントの他、アフリカのシリアルアントレプレナーなど外部のエキスパートも参画する。

前回のプログラムでは以下3つのスタートアップが選ばれている。

必要な薬を置いている薬局を患者が探すことのできるサービス

症状により病気の自己診断ができるモバイルアプリ

偽造された薬を見分けることのできるサービス

 選出されたスタートアップはアフリカの医療/健康関連市場の環境における課題解決につながるサービス開発を志向したプログラムの設計になっており、それを反映した構成となっている。

4.地域毎のプログラム調整で横展開してイノベーション創出機会を広げる

 ドイツとケニアでのアクセラレータープログラムの内容を比較してみると、枠組みや運用方法は共通でありながら、テーマ設定やサポート内容はそれぞれの地域に合わせたものになっている。

 特にケニアで選ばれたスタートアップ3社の事業内容を見ると、各地域の医療/インフラ状況などが、スタートアップの選考基準にも反映されていることが見て取れる。

 メルクはこのように2つの地域で異なるテーマのプログラムを実施しながら、運用方法や実施タイミングを共通化することで効率的に2つのプログラムの運用を実現している。

 これは、メルクのイノベーションセンターが中核となり、グローバルでの事務局機能を担ってアクセラレータープログラムの枠組みをコントロールしていることで実現可能になったと言えるだろう。

 ドイツとケニアに加えて、今後はシリコンバレーでもプログラムを開催を検討している。

 複数地域で同時運用可能な共通の運用フレームワークを作ることで、地域ごとにテーマが異なっても同水準の成果が見込めるアクセラレータープログラムの運営をメルクは実現している。

 グローバルでアクセラレータープログラムの同時開催を行う企業も増えてきており、グローバルでのプログラムの管理/事務局機能を持つセンターの設置と運用フレームワークを作るという運営形態に関してメルクの取り組みは大いに参考にできる事例と言えるだろう。

 

執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

INNOVATION SOLUTIONチーム

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種での新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業における新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

 
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