アジアのイノベーションプラットフォームでオープンイノベーションを進めるMetLife
日本とシンガポールでアクセラレータープログラムを同時開催するMetLife
グローバルでの大手生命保険グループのメットライフが複数地域で連携してオープンイノベーションの取り組みを推進している。
2016年11月14日、シンガポールのMetLife Asiaが実施するアクセラレータープログラム「Collab」と日本のメットライフ生命保険が実施する「MetLife Collab Japan アクセラレータープログラム」は同時にスタートアップの応募を開始した。
メットライフは1868年に米国で創業され、現在は、米国、日本、中南米、アジア、ヨーロッパ、中東の約50ヵ国で保険事業を展開し、約1億人の顧客を有する世界最大級の生命保険グループとなっている。
近年、メットライフは全社を挙げて、デジタル化による業務効率の向上、顧客体験の向上を実現する取り組みを積極的に進めている。
アジア地域におけるオープンイノベーションの取り組みの一環として、シンガポールのMetLife Asiaが実施するアクセラレータープログラム「Collab」と日本のメットライフ生命保険の「MetLife Collab Japan アクセラレータープログラム」ではそれぞれ各地域でのインシュアテック関連のスタートアップと協業し、保険業界での新たなサービスや業務改革に向けたオープンイノベーションの取り組み強化を目指している。
1.シンガポールのMetLife Asiaが実施する「Collab」
シンガポールのMetLife Asiaのイノベーションセンター「LumenLab」が主導で3か月間のアクセラレータープログラム「Collab」を実施する。
「LumenLab」はシンガポールを拠点に中国、日本、マレーシア、インド、バングラディシュなどアジア圏における新規サービスの立ち上げ、拡大や、顧客体験の向上を目指したプロジェクトを推進しているイノベーションプラットフォームと位置付けられる組織となっている。
アクセラレータープログラムの「Collab」は、「LumenLab」が推進する複数のイノベーションプロジェクトの中の1プロジェクトとして位置付けられている。
「Collab」でのオープンイノベーションの実現を目指すテーマとして「new business model」、「sales process」、「operation process」、「customer engagement」の4領域でスタートアップを募集する。
スタートアップは3か月にわたりコンサルティング会社PwCやベンチャーキャピタルのVelocityからBtoBセールス、保険業界、資金調達に関連したメンタリングをリモートで受けることができる。 プログラムに進んだ企業は8社
営業、プレゼンなどのオンライン研修プラットフォーム
Democrance
新興国の貧困層など低所得者向けのマイクロ保険
FacebookやLiknkedinなどのSNSと連携し、保険の契約申し込みにおける情報入力を自動化
金融商品を販売するWebサイトで顧客対応するチャットボット
子供の健康状態を知ることができるウェアラブルデバイス
AIを活用した保険金詐欺検出テクノロジー
保険に特化した顧客管理、マーケティングツール
顧客との通話など会話を分析するソフトウェア
2017年3月19日にデモデイが実施され、優勝スタートアップに10万ドルの賞金が授与される。
この中から有望なスタートアップは「LumenLab」のイノベーションプラットフォームとも言えるネットワークを通じてアジアに幅広くサービス展開を進めていける可能性がある。
2.日本で実施の「MetLife Collab Japan アクセラレータープログラム」
シンガポールのプログラムと同時期に開催される日本のメットライフ生命保険の「MetLife Collab Japan アクセラレータープログラム」において3領域で有望なテクノロジー、ビジネスモデルを持つスタートアップを募集している。
ヘルスケアサービス
健康管理、疾病予防のためのソリューション
保険金・給付金の支払・請求プロセス
保険金の支払い・請求プロセスを効率化、簡易にするソリューション
医療・介護へのアクセス
顧客が病気や介護が必要になった際、医療や介護サービスへのアクセスを簡単にできるようにするソリューション
プログラムに進むスタートアップは3か月にわたってメットライフ生命保険のみならずパートナー企業のメンタリング、支援を受ける。
NPO法人医療の質に関する研究会、河村総合病院などの専門家によるアドバイスや、インキュベイトファンド、アーキタイプベンチャーズ、グロービス・キャピタル・パートナーズなどのVCによるビジネスモデルなどに関するアドバイス、メットライフ生命保険が有するデータへのアクセス、PRサービスの提供など包括的なメンタリング・支援がプログラムで用意され、デモデイは2017年4月に設定されている。
また、シンガポールのMetLife Asiaが実施するアクセラレータープログラム「Collab」と連携しており、有望なスタートアップは「Collab」の選出企業に推薦され、シンガポールのプログラムに参加し、「LumenLab」と新たなサービス創出を進めていく可能性もある。
このようなメットライフの取り組みはプログラムの実施地域に関わらず有望なスタートアップのテクノロジーやビジネスについて地域を超えて展開していくことを狙ってのことであろう。
3.地域毎にアクセラレータープログラムを実施しつつ連携
メットライフはグローバルに展開するグループの利点をアクセラレータープログラム運営において最大限活用し、シンガポールと日本で同時期に個別のプログラム運営を行い、有望なスタートアップはシンガポールからアジア全域に展開できる可能性を持ったプログラムとして運営している。
グローバルに複数拠点でアクセラレータープログラムを運営する企業も増えてきているが、グローバルで協業の成果を引き出すためには、有望なスタートアップについては開催地域での協業に閉じることなく、開催地域間で紹介し合いながら協業地域を広げて事業拡大の可能性を差大化するという取り組みの模索が今後は増加していくだろう。
執筆者
株式会社ベルテクス・パートナーズ
INNOVATION SOLUTIONチーム
大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種での新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業における新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。
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