独TV局ProSiebenSat.1 Mediaの新規事業アイデア募集のプログラム使い分けの事例

CVCとアクセラレータープログラムを使い分けて新規事業のアイデア募集

 

 世界各国どの地域でもスマホの普及などメディアとの接点が多様化し、既存の放送事業者は事業領域の多角化を積極的に進めている。

 

 今回紹介する独TV局ProSiebenSat.1 Media AGもデジタル領域への進出等を通して事業の多角化を目指している。

 

 新たな収益の柱となる事業を探る取り組みとしてスタートアップとの協業による事業の多角化を急いでおり、アクセラレーターとCVCを使い分けて、スタートアップとの恊働体制を構築して新規事業アイデアを募集している。

 

 

1.デジタル化を推進する独TV局ProSiebenSat.1 Media

 

 近年続くメディアとの接触方法の多様化やコンテンツ視聴形態の変化により、大手メディアも自らのビジネスを変化させ続けることを迫られている。

 

 従来メディアの代表格であるテレビ業界も、変化への対応を急速に迫られている領域だ。 インターネットやスマートフォンで、自分の好きなタイミングで、好きなコンテンツに触れることができるようになるにつれて、従来のテレビをコンテンツとの接点として主役に据え続けることはますます難しくなっている。

 

 世代を問わず進むテレビ視聴時間の減少に伴い、デジタル化に対応した新規事業の必要性が高まる中、意欲的な取り組みでアイデア募集を行い、注目を集めているのが、独TV局のProSiebenSat.1 Mediaだ。

 

 欧州メディア企業の最大手の一角を占めており、4200万世帯の視聴者を抱えている。現在、ドイツ・スイス・オーストリアでの無料放送に加え、有料放送やインターネット放送の展開を行っている。

 

 また、デジタル領域でのビジネスの対応で新規事業による新たな収益源を確保するため、Eコマース事業、TV番組コンテンツのパッケージ販売、VOD(Video On Demand)サービスなど多角化を進めている。

 

 こうしたテレビ事業とそこに隣接する領域の事業に加えてProSiebenSat.1 Media AGが力を入れているのが、スタートアップとの協業と投資だ。デジタル化の推進のため、アクセラレーターとCVCをうまく活用して新たな事業創出とアイデア募集に取り組んでいる。

 

 

2.スタートアップとの協業で事業多角化を急ぐProSiebenSat.1 Media

 

 ProSiebenSat.1 Mediaがスタートアップとの協業に取り組むのは、新規事業として取り組む事業領域の多角化を、より素早くアイデア募集し、効果的に行うためだ。

 

 新規事業の開発は、自社のリソースを使った立ち上げも考えられるが、デジタル領域の事業は、必ずしもこれまでのテレビ事業で構築してきたリソースや優位性を活かせる領域ではなく外からアイデアを募集した方が迅速に進めることが可能となる。

 

 新たな知見とスピード感、アイデアとノウハウを必要とする取り組みだと言える。

 

 デジタル領域で新たな事業の迅速な立ち上げを目指す同社としては、すでにプロダクト/サービスの市場での展開を進めており、成果を挙げ始めているスタートアップからアイデアを募集し、協業していく事が近道となる。

 

 リスクを取って新しい領域に着手しているスタートアップと、そこに付加できるProSiebenSat.1 Mediaの多大なリソースを加えることで、互いにウィンウィンの関係を築くことができるのだ。

 

 

3.青田買いを狙うアクセラレータープログラム「P7S1 Accelerator」

 

 ProSiebenSat.1 Mediaが、アーリーステージのアイデアを持つスタートアップを募集・育成し、協業を探る為に立ち上げられたのが、アクセラレーターのP7S1 Acceleratorだ。

 

 ベルリンで3ヶ月間をかけて開催されるプログラムでは、デジタル領域の専門家からのコーチング、スペースの提供、25万ユーロの資金提供、投資家が集結するデモデイが開催される。

 

 プログラムは2013年から行われており、年に2回開催され、すでに8回目のアイデア募集が行われている。

 

 ProSiebenSat.1 Mediaとして、様々な領域への参入の芽を生み出すために、事業領域やテーマの設定は基本的に行っていない。

 

 アイデア募集条件として課されているのは、B2Cビジネスであること。広告領域では、例外的にB2Bも認められている。

 

 ProSiebenSat.1 Mediaとして、テレビの視聴者を始めとするユーザーとの新たな関係性を築けるビジネスやサービスを展開しているアーリーステージのスタートアップの青田買いを行っているような位置付けだ。

 

 

4.レイトステージをターゲットとするCVC「SevenVentures」

 

 アクセラレータープログラムに続いて、より強固な協業のための投資を行うのが自社CVCの「SevenVentures」だ。

 

 メディア関連領域に特化したCVCであり、B2Cである程度事業を確立している有望スタータップに投資を行っている。

 

 中でも、消費材、リテール、サービス業、テレビ広告等を活用したビジネスを模索している。

 

 そしてCVCでも、お金を出すのみの関係ではなく、3ヶ月間のメンタリング期間が設定されており、投資とグロースの両方の支援を行うことが特徴的だ。

 

 さらに、50万ユーロ相当のTVCM枠も投資先スタートアップに提供しており、ProSiebenSat.1 Mediaが有する視聴者4200万世帯へのリーチが可能なマーケティング支援まで行っている。

 

 ProSiebenSat.1 Mediaは、デジタル系メディアに押されつつあるもののメディア企業として依然市場に大きな影響力を持っており、自社サービスをスケールさせたいスタートアップにとっても、投資と合わせてこれらのリソースを活用した支援が受けられることは非常に魅力的と言えるだろう。

 

 

5.CVCとアクセラレーターを使い分けたスタートアップとの協業

 

 こうしたCVCやアクセラレーターは、放送事業者として、デジタル領域の成長を自社に取り込む、ビジネスモデルを構築し直すための試みと言える。

 

 ProSiebenSat.1 Mediaは、デジタル領域でのスタートアップとの協業を推し進めるべく、ターゲットとするスタートアップのステージに応じて、CVCとアクセラレータープログラムを戦略的に変えている点が特徴的だ。

 

 まだプロトタイプしか持たない早い段階のスタートアップに対しては、アクセラレータープログラムで支援を行い、育成期間を設けて有望スタートアップの見極めと協業・投資による取り込みを目指す。

 

 そして、より具体的な協業と投資としての成果が望めるレイトステージのスタートアップとは、CVCを通じた投資を行う。

 

 アクセレレータープログラムでは、有望なビジネスを早い段階で青田買いし、CVCでは投資先の売上を連結させて、自社の売上向上につなげる。スタートアップ側に、支援や協業の魅力的な条件を提示しながらも、自社にとってのメリットもしっかりと確保している。

 

 アクセラレータープログラムやCVCを通して、自社にとってもスタートアップにとっても望ましいウィンウィンな関係を作るための使い分けは、これからのスタートアップとの協業を効率的かつ仕組みとして実現していくためには押さえておくことが必要な取り組みになるだろう。

 

 

 

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

INNOVATION SOLUTIONチーム

 

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種での新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業における新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

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