オープンイノベーションで適材適所のサービス開発を行う米小売Targetの事例

米国小売大手Targetにみるグローバルに実施するイノベーション創出事例

 

 米国小売大手のTargetはインドと米国の2か国においてイノベーションを創出するためのアクセラレータプログラムを独立して運営してサービス創出を行っている。

 

 なぜTargetはわざわざ2か国でアクセラレータプログラムでにオープンイノベーションの取り組みを実施することにしたのか、その理由に迫る。

 

 

1. Targetはインド、米国と国別にアクセラレータプログラムを実施

 

 Targetは1902年に米国ミネソタ州ミネアポリスに創業。米国内で1,500店舗以上を運営している米国の大手小売事業者だ。Targetはこれまで店内のデザインや商品の品質にこだわった「スタイリッシュさ」で差別化を図ってきた。

 

 しかし、近年の小売業界ではAmazonが台頭し、小売最大手のWalmartはWalmart Labというイノベーション創出を狙った組織を立ち上げ、テクノロジー分野において一層厳しい競争に晒されており、テクノロジーを用いて業務運営の効率化や購買体験を向上させるEコマースへの対応も求められるようになっている。

 

 このような状況の下でTargetは小売業界での生き残りをかけオープンイノベーション取り組みに意欲的だ。

 

 2005年、TargetはIT化を進めるために全社ITシステムの管理などバックオフィス機能を担当するインド法人を設立しているが、そのインド法人で2014年3月、米国に先駆けて現地スタートアップ向けのアクセラレータプログラムを単独で実施した。

 

 さまざまな技術を持ったスタートアップと協業することでバックオフィス機能強化を狙いオープンイノベーションを推進している。

 

 一方で、2016年6月米国ミネソタ州のミネアポリス拠点のTarget本社は、TechStarsと共同で1回目のアクセラレータプログラムを実施した。

 

 米国のプログラムではスタートアップと協業し、バックオフィス機能以外の小売ビジネスの主要領域の強化と周辺領域でのオープンイノベーション実施を目的としている。

 

 次章で、インドと米国、それぞれのアクセラレータプログラムが選抜したベンチャー企業の事業内容を比較してみよう。

 

 

2.Targetインド法人のアクセラレータプログラム

 

 2016年4月、インドのバンガロールに拠点を置くTargetインド法人は4回目となるアクセラレータプログラムを実施した。

 

 スタートアップには小売業界の専門家によるメンタリング、資金調達、4か月間にわたって米国とインドのTargetビジネスチームと共に実証実験を行う機会が与えられる。

 

 選抜されたスタートアップは以下。

 

  Preksh

小売やEコマースサイトに活用できるAR技術の提供

 

  MintM

小売店舗で広告を出稿できるようにするツール

 

  Uncanny Vision

コンピュータ画像処理ライブラリ

 

  Lechal

視覚障害のある人をサポートする触感センサー搭載シューズ

 

  Lawbot

自然言語処理を活用して契約書に間違いがないか検出するツール

 

 

3.Target米国本社のアクセラレータプログラム

 

 2016年6月、米国ミネソタ州のミネアポリス拠点のTarget本社はTechStarsと共同でアクセラレータプログラムを実施し、11社のスタートアップを選抜した。

 

 選抜されたスタートアップはTarget社内のメンター、小売業界向けのテクノロジースタートアップで成功した起業家、投資家など150人以上と多数のメンターから3か月にわたってメンタリングを受けた。

 

 また、Targetの店舗で製品・サービスの実証実験を実施し改良を重ね、2016年9月には実施した製品・サービスのデモでは1,000人以上の投資家を集めるにいたった。

 

 プログラムに参加した11社の企業

 

  AddStructure

ECサイトでチャットを通して購入を促進するチャットボット

 

  Branch Messenger

小売における従業員の勤労管理を円滑にするツール

 

  Blueprint Registry

新婚の夫婦が部屋のインテリア、ハネムーンの旅行プランを購入できる特化型ECサイト

 

  Inspectorio

商品の点検プロセスを可視化するためのモバイルプラットフォーム

 

  Itsbyu

ウェディングブーケットを購入できるECサイト

 

  Maker blocks

電子ブロックの知育玩具

 

  Makerskit

ハンドクラフトのサブスクリプションサービス

 

  Nexosis

小売りビジネス向け、機械学習によるデータ分析ツール

 

  Revolar

所有者の位置を特定できるウェアラブルデバイス

 

  Spruce

実店舗で服のスタイリング、服の購入、散髪といったサービスをトータルに提供。またサービスはオンラインから予約可能。

 

  Good and Gather

原料の開示など透明性にこだわった食品のパッケージが特徴の食品ブランド

 

これらのスタートアップもTargetによる出資は約束されているものではなく、Target以外の小売企業とパートナーシップが結べなくなるような契約を必要とするエクスクルーシブなプログラムではない。

 

 ただし、スタートアップは12万ドルの資金提供を受けることと引き換えに、TechStarsの6~10%の出資を受けることが必要になる。

 

 

4.グローバルで適材適所を目指すオープンイノベーションのあり方

 

 インドと米国のアクセラレータプログラムで選出されたスタートアップを比較してみるとTargetの市場は主に米国にあることから、インドと米国のアクセラレータプログラムで狙うイノベーション創出の領域の切り分けを行っていることが見て取れる。

 

 米国のプログラムではバックオフィス機能強化以外の小売ビジネスに直結する主要領域の強化と周辺領域での事業化を狙っている。

 

 一方、インドのプログラムでは従来のインド現地法人の役割を引き継いでバックオフィス機能強化ならびに小売の現場を支援する技術の強化を狙っている。

 

 グローバルで地域ごとに独立した形で課題設定と体制構築を行い、本社がコントロールしないローカルファンクションとしてプログラムを実施する運営形態が生まれ始めている。

 

 グローバルでの適材適所でサービス創出を目指すオープンイノベーションの面白い事例と言えるだろう。

 

 

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

INNOVATION SOLUTIONチーム

 

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種での新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業における新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

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