イノベーションの必要性から専門組織を作ったユニリーバの取り組み事例

継続的なオープンイノベーション推進専門組織「The Unilever Foundry」

 

  2014年、消費財大手ユニリーバはオープンイノベーション継続的に行うための専門組織「The Unilever Foundry」を設置した。

 

 これまで自社のマーケター200名以上がスタートアップ企業の支援を行い、イギリス・シンガポール・アメリカ・インド・ブラジル・中国において、既に100件を超えるサービス/プロダクトの実証実験を行っている。

 

 

1.The Unilever Foundryの取り組みとその背景

 

 ECの普及が本格的に進み、スマホによるECサイトでの商品購入までが一般的になり、グローバルで大きく消費者の消費財の購買行動が変化している。

 

 最寄品として自宅周辺で購入するECにはなじまないと言われていた家庭用品すらもECサイトを通じて購入するという消費者の購買行動の変化が進み始めている。

 

 直近ではAmazon Dash Buttonなど根本的な消費者行動の変化を促すようなサービスも登場し、ユニリーバのような消費財大手もECサイトや関連テクノロジーの進化とは無縁ではいられず、常にそのような環境の変化にキャッチアップする必要性に迫られている。

 

 しかし、グローバルに事業展開を行うユニリーバでも、従来の取り組みでの社内リソースに頼ったイノベーションを継続することは容易ではない。

 

 そこで、本事例のユニリーバは自力でのイノベーション創出だけではなく、スタートアップと協業しオープンイノベーションの実施を仕組みとして取り入れる方向性に舵を切った。

 

 

2.オープンイノベーション推進の専門組織「The Unilever Foundry」

 

 ユニリーバは社外スタートアップと継続的に協業するためのオープンイノベーションのプラットフォームとしてThe Unilever Foundryを設置した。

 

 The Unilever Foundryでは以下の5分野でスタートアップから協業アイデアを募る取り組みを継続的に実施している。

 

 実際にユニリーバのLUXなどの各ブランドが抱えている課題解決や注力領域の強化につながるテーマを設定して、それらを実現できるサービス/テクノロジーを持つスタートアップとの協業を目指している。

 

【協業アイデア募集領域】

 

 Product & Ingredients

例) 食品廃棄物の削減

 

 Consumer & Market Intelligence

例) 顧客とコミュニケーションするチャットボット

 

Marketing, AdTech & e-Commerce

例)顧客をエンゲージするコンテンツ作成、配信

 

Sustainability & Social Entrepreneurs

例)スマートホームでシームレスな購買体験

 

Enterprise Tech

例)チームでの業務を円滑にするコミュニケーションプラットフォーム

 

 スタートアップはThe Unilever Foundry専用Webサイトで公開されている募集テーマにまずはエントリーをしていく。

 

 4週間以内に審査通過の通知がされ、審査を通過したおおよそ5社のスタートアップがピッチでのプレゼンの場に招待される。

 

 さらにピッチで高い評価を得ることができたスタートアップには1週間以内に実証実験への招待の通知がされ、実証実験に招待されたスタートアップは3か月にわたりユニリーバのマーケターによる事業拡大に向けたメンタリングを受けることができる。

 

 そこから実証実験で良好な結果を残すことができたスタートアップは、ユニリーバのコーポレートベンチャーキャピタル「Unilever Ventures」からの投資や協業契約を結ぶことができる可能性がある。

 

 The Unilever Foundryで実現した協業事例"これまでにThe Unilever Foundryを通して100以上の実証実験が行われてきた。

 

 その中で、実際にスタートアップとの協業に至った事例の一部を紹介する。

 

カスタマイズ「マーマイト」のサイトを開発

ユニリーバが扱うイギリスの国民食とも言えるビールの酒粕を主原料とした発酵食品「マーマイト」とカスタマイズギフトを製作するIntervinoが協業して、消費者が「マーマイト」の瓶に名前を入れることができるカスタマイズ「マーマイト」の販売サイトを設立。

 

若い世代の消費者とのエンゲージメントを構築する動画コンテンツの作成

ユニリーバのアイスクリーム「Cornetto」は若い世代向け動画コンテンツ作成プラットフォームのVidsyと協業して若い世代の消費者をエンゲージするための動画コンテンツを作成した。

 

クイズ形式のコンテンツで消費者をエンゲージメントを構築

ユニリーバのヘアケアブランド「LUX」はゲームコンテンツ作成スタートアップGametizeと協業してクイズ形式のコンテンツをWebサイトに掲載した。

 

 

3.継続的にイノベーションを取り込む仕組み構築で成長を目指すユニリーバ

 

 デジタル化の進展に伴い、大きな変化に直面している消費財業界において、グローバルに展開する消費財大手のユニリーバと言えど、常にイノベーション創出の取り組みを進めていかなければ変化に対応することが難しいという危機感を持ち、The Unilever Foundry設立に至った。

 

 The Unilever Foundryにおいては、その時々でユニリーバが抱えている課題や注力領域に関連するテーマを計画的に選定して、協業先候補となるスタートアップの募集を出している。

 

 一般的な企業アクセラレータプログラムのようにプログラム実施後にその成果を見てその都度プログラムを継続するか判断するという形ではなく、継続的にアクセラレータプログラムが運営できるようにテーマ選定からスタートアップの募集・評価の流れが仕組み化されてThe Unilever Foundryという専門組織で行われている。

 

 さらに複数テーマを独立したプログラムとして並行して運営を行うなど課題解決/注力領域強化という目的を最短距離で実現できるような仕組みとして運営がされている。

 

 単発イベントとして大きく社内外にアピールすることも目的として含めて運営されることも多いアクセラレータプログラムとは一線画す組織/運営形態が取られている。

 

 アクセラレータプログラムもイベントとして実施して1~2つの実証実験を行って成功と評価するというステージを既に過ぎ去り、仕組みとして組織にいかに組み込み継続的に協業の実施/成功させるかということが検討の中心となりつつあると言えるだろう。


 

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

INNOVATION SOLUTIONチーム

 

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種での新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業における新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

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