エアバス社が取り組む大手企業とスタートアップが学び合う協業の新たな形

大手企業も学びを成果とするハイブリッドコンセプトのプログラム

 

  フランスのエアバス社が手掛けるアクセラレータプログラムBizLab。大手企業がスタートアップを支援するという従来の一方向の図式から、大手企業側も専門の社内組織を持ち、両者が相互に学びあうという新たな形のプログラムを展開し、注目を集めつつある。

 

 今回は2015年から始まったインドでのプログラム運営事例を中心に、新たなアクセラレータプログラムのあり方を紹介する。

 

 

1.2015年にインドでエアバス社のアクセラレータプログラムが始動

 

 2015年、フランス/トゥールーズ、ドイツ/ハンブルグに続く3番目の拠点として、インド/バンガロールでエアバス社のアクセラレータプログラムBizLabの運営が開始された。

 このプログラムは、ヨーロッパのアクセラレータ事業者である「NUMA」と共同で運営され、Microsoft Ventures、Google、Techstars Bostonといった企業とも連携をしている。

 

 6か月間のプログラムを通して、Airbusとスタートアップが連携し、ロボティクスやデジタル系ソリューション、コミュニケーションネットワークといった領域において事業化を目指す。

 

 そのためにBizLabは法務やファイナンス、マーケティングなど様々な領域のエアバス社のエキスパートによる助言を得られる機会をスタートアップ各社に提供する。

 さらに、オフィススペースや試作・テスト用の設備も用意するといった内容となっている。

 

 

2.第1回目は4社のスタートアップと協業推進

 

 インドでの第1回目のプログラムには7か国80社のスタートアップから応募があり、航空業界での新たな価値創出が期待される以下の4つのスタートアップが選ばれた。

 

・Blue Morfo

ヘルスケアのモバイルアプリを通し、搭乗員の船酔いや気圧の変化による健康リスクのといった航空業界特有の健康問題を発見・予防

 

Shoonya Games

VDや3D技術を活用したモバイル端末でのインタラクティブなゲームを、社内のマーケティングやトレーニングに活用

 

Open Turf

コンテンツ配信プラットフォームを通し、乗客自身のデバイスを使用するワイヤレス機内エンタメを提供

 

Qualitas

2D・3Dの機械学習による画像認識技術を強みとする製造工程の自動品質管理システムを開発

 

 エアバス社のBizLab創設者であるBruno Gutierres氏は、従来の社内の技術を活用したイノベーションの取り組みだけでは、今後の市場変化に対する対応が不十分と感じており、エアバスにおける当プログラムの必要性について以下のように述べている。

 

“Airbus has always been at the forefront of innovation for many years, but now the ecosystem is changing. We need to broaden our horizons,”

出典:TECH IN ASIA

 

 近年、エアバス社をはじめとする航空業界は、イノベーション推進の競争が激化しており、スタートアップと組むことで、社外からのイノベーションのアイディアの獲得と革新的なアイディアやテクノロジーを事業化につなげるスピードを上げることが、BizLabにおけるエアバス側の狙いとなっている。

 

 現在第2回目の公募が行われており、2017年1月に開始予定 インドでのBizLabは、第1回の成果を評価し、2017年1月から第2回目のプログラムも開始予定となっている。

 

 第2回の公募に際し、エアバスは「VR/AR」、「IoT」、「FinTech」、「ドローン」など13のテーマを例として挙げており、直接的に航空機製造に絡まないものも含めて新たなテクノロジー/サービスによるイノベーションを自社のビジネスに取り込もうという意識が見て取れる。

 

 

3.エアバス社内にイノベーション組織を持ちつつ相互に学びあう体制

 

 Bizlabのユニークな特徴は、大手企業がスタートアップを支援するという従来のアクセラレータプログラムの枠組みを超えて、大手企業であるエアバス側も社内にイノベーション組織を持ち、スタートアップから知見を得ることを目指していることである。

 

 エアバス社員もスタートアップと同様に社内プロジェクトに取り組み、スタートアップとも協業することで、イノベーションのアイディアを迅速に事業化する方法などを学び、エアバスの組織内にも起業家精神の移植を行っていこうとしている。

 

 こうした取り組みにより、航空業界の外から先端的な技術やアイディアなどを素早く取り込むことで、社内でイノベーションが創出できる組織を構築することを目指している。

 

 一方、スタートアップブーム真っ只中のインドでは、スタートアップをめぐり、マネジメントの稚拙さ、計画性のない支出、過剰雇用といったトラブルのニュースも多く飛び交っている。 業界経験や知識の薄いスタートアップにとっては、BizLabのアクセラレータプログラムによりエアバスの持つ専門知識やノウハウを学ぶことで、これらの問題を未然に防ぐことが可能となる。

 

 アクセラレータプログラムの実施時に、大手企業とスタートアップで協業や出資関係を作るという段階まで至らないということも多くある。

 自分たちの成果実現を目指すだけではなく、両者が協働する過程で大手企業の業界/専門知見とスタートアップのアイデア/技術を事業化するノウハウを相互に学び合うことで自社の業界におけるイノベーションを生み出しやすい環境/体制を大手企業、スタートアップ両方に作ることができる。  

 単純な協業だけでは成果に繋がらないということも多く見られる中で、アクセラレータプログラムの目的として協業実現だけではなく、両者にWin-Winとなる形でのノウハウ獲得をゴールとするのも一つの選択肢となるだろう。

 

 

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執筆者

株式会社ベルテクス・パートナーズ

INNOVATION SOLUTIONチーム

 

大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種での新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業における新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。

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