世界のビジネススクルール・大学が提供するデザインシンキング講座まとめ
こんにちは!イノベーションソリューション事業部の袖山です。
今回は、世界各国のビジネススクールが提供するデザインシンキング講座のまとめをお送りします。
デザインシンキングは、新しいサービスやプロダクトの立ち上げ、カスタマーエクスペリエンス改善、マーケティングなどさまざまなビジネスの局面において活用できるスキルです。
私自身は大学でUCD(ヒューマンセンタード)デザインの研究を始めてから、15年以上にわたってデザインシンキングを活用してきました。
“ユーザーを中心に考える”という根っこの部分は長年変わってはいないものの、デザインシンキングはこの15年の間にも進化を続けています。
そんな中でデザインシンキングの可能性や新しい進化の形について見聞を広げるために、海外のビジネススクールに参加することにしました。
本日は2021年8月時点での、海外のビジネススクールが提供するデザインシンキングに関連する講座の特徴などのまとめを共有させていただきます。
「何を学ぶか」に加えて「どう学びを進めるか」という2つの観点からまとめます。通常「何を学ぶか」のカリキュラムなどに目が行きがちではありますが、アクティブ・ラーニングをはじめとして生徒たち自身が自ら学びを進めていくための仕組みこそが高い学習成果に繋がることが言われているためです。
MIT Sloan – Mastering Design Thinking
カリキュラムについては、MITが提供するだけあって論理的なデザインシンキングかつファイナンシャルといったビジネスの側面からアイデアを進化させる方法を学べる。
顧客のニーズからソリューションを作り、プロトタイピングまで落とし込むというデザインシンキングの基礎の部分をはじめとして、キャッシュフローの考え方やサービス改善に欠かせないNPSを指標として活用する方法など、一般的にデザインシンキングに足りないと言われてきたビジネス側面の学びがたくさんある。
学びのスタイルについては、基本的にはオンライン講義で自主学習とエッセイを書くスタイル。さらにはチームのアイデアを一つ決めて、デザインシンキングで進化させていくというアクティブラーニングスタイル。グループワーク以外は自分のペースで進められるため、日本で働いている社会人でも参加は可能。
ただし世界中の学生とのオンラインディスカッションがあるため、ある程度英語でコミュニケーションできることが前提条件。
London Business School
MITの12週間を6週間に圧縮した簡易版。カリキュラムは、カスタマーニーズの発掘からプロトタイピングまでとベーシックなデザインシンキングの領域を学ぶ印象だが、最終モジュールでイノベーションカルチャーの作り方やイントレプレナー(社内企業家)としての立ち振る舞いについての学びがあるのが特徴。
グループワークがなく、基本的にはオンラインでビデオをみながら自主学習を進めたり、掲示板で他の学生と意見交換したり、自分でエッセイを書いて提出するというという方式。
ちなみに、MITとLondon Business Schoolは、EMERITUSというオンライン学習プラットフォームを利用している。EMERITUSはマーケティング・CRMまでをサポートしており、資料請求すると国際電話で何回も電話をかけてくるという、追いかけっぷりには感嘆。
eCournell
プログラムの内容については、顧客ニーズ・課題の発掘から、ソリューションの考案、プロトタイピングまでを学ぶというベーシックな内容。
強いて特徴を挙げるのであれば、他のスクールには珍しいフィールドワークによる観察の実践がカリキュラムに含まれている。観察はデザインシンキングのコンセプトである「顧客中心に考える」クセを付けさせるための良い方法ではあるが、オンラインで実施するのが難しいため採用しているところは稀。デザインシンキングについては隙のないカリキュラムになっている一方で、ビジネス側面のモジュールはほとんど含まれていない印象。
余談ではあるが、プログラムはこの記事で紹介するスクールの中では最長の6ヶ月のプログラム。35名以下のクラス制をとっており、ビデオ教材をみながらのセルフラーニングに加えて、クラスの中でディスカッションなども行われるというのが学びのスタイルの特徴。
IDEO U
デザインシンキングの本家のIDEOが提供する大学。指定されたモジュール(3week~)をいくつか習得すると、合わせ技一本で「Business Innovation」や「Advanced Design Thinking」のサーティフィケーションがもらえるというシステム。
例えば「Business Innovation」のサーティフィケーションをもらうためには「Designing Strategy(5weeks)」と「Designing Business(5weeks)」の修得する。「Advanced Design Thinking」のサーティフィケーションをもらうためには「Insights for Innovation」「From Idea to Action」「Storytelling for influence」「Unlocking Creativity」「Designing a Business」「Human-centered Service Design」の中から5つのコースを修得するというシステムである。
”IDEOのデザインシンキングは使えない”と揶揄されることもあるが、カリキュラム・モジュール自体は最もシステマティックな印象で、感性的な部分だけでなく、イノベーションプロセスやビジネスの描き方といった多角的な観点が含まれている。特に「Designing a Business」のコースでは、収益モデルや販売チャネル、ビジネスモデルデザインの方法についても本格的なカリキュラムが組まれていることが興味深い。
Stanford Business
スタンフォード大学で開催されている短期集中型のプログラム。3.5日の開催で1300ドル(150万円)という強気価格である。スタンフォード大学に行けないと参加できず、このプログラムを申し込むには他のいくつかのコースを就業していないといけないため、受講のハードルは最も高い。
カリキュラムの内容は、実はほとんどHPやパンフレットでは語られていない。何が学びとして得られるかというよりも、参加者や講師陣とのネットワークが築けるといったメリットを全面に語っている。2/3の受講者がプログラム終了後に何かしらのサービス・プロダクトを立ち上げると語られ、短期プログラムではあるが最も新事業創出という成果にこだわっているのかもしれない。
University Arts London
ロンドン芸術大学が提供する、4週間でデザインシンキングの基礎をマスターするオンランプログラム。
カリキュラムはカスタマーニーズの分析からプロトタイピングまでデザインシンキングの基礎に加えて、MVP(Minimum Viable Product)の要件決めの方法やフレンドリーなUXを提供する方法など、他のプログラムではあまりお目にかかれないデザインシンキングのその先について学べることが特徴。
UK時間でライブ講座に参加することが求められる。
いかがでしたでしょうか。
ここで紹介するもの以外にもいくつかデザインシンキングの講座がありましたが、デザインシンキングの本家本元や最先端のビジネススクールが提供する講座を厳選して紹介させていただきました。
「IDEO U」のカリキュラムが最も多角的かつビジネス寄りで、それこそユーザー中心に“使える”カリキュラムを練っているなと感じました。MITやLondon Business Schoolなどは、母体がビジネススクールということもあり、デザインシンキング+科学的なアプローチを学べることが期待できそうです。
参加には最低でも英語の読み書き、一部のスクールではディスカッションができるほどの英語力を求められることになりますが、見方を変えると英語さえできてしまえば世界の最新の教育に触れられるということでもあります。
デザインシンキングをはじめ、ビジネスの現場で使われるフレームワークや知識は常にアップデートされ続けているので、英語を磨いて最新の情報を取り入れていきたいものですね。
我々の提供する「イノベーションデザイントレーニング」においても最新のデザインシンキングを使って新しいサービスやプロダクトを立ち上げる方法を学ぶことができます。従来からデザインシンキングの弱点であるとされてきた、ビジネスモデルの側面も補ったプログラムです。
社内企業家育成、部下の育成に課題を抱えている方はぜひこちらをご覧ください。
袖山晋(Shin Sodeyama)
株式会社ベルテクス・パートナーズ
イノベーションソリューション事業部
デザインシンキング歴15年以上。クリエイティブファームにてブランディングや新事業開発支援の経験を経のち、ものづくりベンチャーを起業し、プロダクトの大英博物館永久収蔵を実現。その後、楽天ヘッドクオーターにて佐藤可士和氏の下、グループ全体のサービス開発支援、UX・ブランド統一プロジェクト推進。ベルテクスパートナーズでは、デザインシンキングを中核にビジネス、テック、クリエイティブの多角的なアプローチでイノベーション創出支援を推進。
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